[読了]“文学少女” と 神に臨む作家 <下>

[読了]“文学少女” と 神に臨む作家 <下>このエントリをはてなブックマークに追加 このエントリをはてなブックマークに追加

FavoriteLoading[New!]お気に入りに追加
このエントリをつぶやくこのWebページのtweets このエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマーク - [読了]“文学少女” と 神に臨む作家 <下> この記事をクリップ!Livedoorクリップ - [読了]“文学少女” と 神に臨む作家 <下> Googleブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク Share on Tumblr FC2ブックマークへ追加 newsing it!

あらすじ

それは、“文学少女”の願いと祈りの物語――。

「書かなくてもいい。ずっと側にいる」――そう告げるななせに救われた心葉。だが、そんな彼を流人の言葉が脅かす。「琴吹さんのこと、壊しちゃうかもしれませんよ」……そんな時、突然、遠子が姿を消した。空っぽの家に残るのは切り裂かれた制服だけ。心葉は遠子を追えるのか? 露わになってゆく真実に、彼が出す答えとは? 遠子の祈り、叶子の憎しみ、流人の絶望――その果てに秘められた物語が今、明らかになる……! “文学少女”の物語、堂々終幕!!

人間関係の裏表が招いた悲しいストーリー

「知ってどうするの」

「会いにいきます」

「会えないかもしれないわよ」

暗い声と、空っぽな目に、首筋がぞくっとした。

遠子先輩の制服が破れていた話をしても、この人は少しも心配していない。遠子先輩がどうなってもいいと思っているように見える。

徹底した無関心。

拒絶。

ぼくは、この人が、怖い。

堂々の文学少女シリーズ完結編。

色々と思うことはありますが、まずは前作の<上>から渡されたバトンを読み解いていくことから始めましょう。

みんなそれぞれを思いやっているのにもかかわらず、それと相反するような不安に囚われ疑心暗鬼に陥っていく様子が印象的でした。

次々に明らかになる真実に脳汁が止まらない。

間違いなく叶子の不器用なまでの結衣への愛情と、それを裏返すような疑心暗鬼が悲しい悲劇の引き金になったのではないでしょうか。

そして、

叶子さんがまさかのツン百合展開。

これは正直驚いた。複雑に感情の絡み合った叶子・結衣・文陽の三角関係が叶子のとった行動によって大きなひずみを生む。この選択によって自らの心に大きな影を落とし、修復不可能で報われない構造を生み出してしまったのが痛々しい。

文陽への復讐のはずだったのに、致命的に結衣を傷つけ、引き返すことができないくらい運命の歯車が狂ってしまうんだよなぁ。

そして何より自分が酷く傷ついてさらに心を閉ざしてしまう。

結衣を誰よりも求め、筆で書き溜めることでしか感情の行き場を持つことのできなかった叶子の不器用さが強く強く心に響いてきました。

そして、弱さを払拭して幸せを叶子に明け渡す覚悟をもつことのできた結衣の強さが光っていたんですがここで結衣と文陽におきた悲劇に大きく運命の歯車が狂ってしまう。

あぁなんでこうなってしまったんだ。これは悲しすぎる。

暗く一旦幕を降ろしたストーリーでしたが……。

そんな三角関係も世代を経て、現代に再びよみがえることで事態は好転します。

第三者の存在が悲劇のトライアングルを掻き回す。

八方塞がりで閉塞していた過去に射した救いの光。

そういう意味では竹田さんの存在感は凄まじかったですねぇ。

竹田さんの ひと刺し で一気に流れが変わったような気がします。

流人は贖罪の楔から解放され、叶子は心の内を打ち明け、心葉が真実を紐解くことでそれぞれの心の奥につっかえていた後悔・憎悪・悲しみが一気に解き放たれて救われたのが本当に良かったです。

流人も納まりがついたし、叶子も掛け値無しで過去と真実を暴露することになったこのぎりぎりのバランスが絶妙でしたねぇ。

だけれどななせはちょっと報われなかったなぁ。とてもいい娘なだけに健気な様子が痛々しかったです。でもボクは遠子先輩派なんだ、ななせご免よっ!

心葉の過ごした2年間が遠子先輩の視点で語られたシーンはとても新鮮で驚きました。そしてやっぱり心葉に好意は抱いていたんだ。遠子の初心なリアクションをみてると物凄く和みます。

あぁ遠子先輩に不純な目で見られたい。そしてあわよくば妄想の中で汚されたい。

閑話休題。

遠子の生い立ちに踏み込んだ心葉に、遠子と過ごした様々な想い出が蘇って来る……!

今までの2年間の月日がすべてつながりあって、流れるように思い返されていく様子に鳥肌が立ちました。

まさしくシリーズ集大成。

ジッドの狭き門に準えた本作でしたが、遠子と心葉が分かっていながらもそれぞれアリスと同じく狭き門を渡る道を選択してしまうのが切ないけどよく分かる。

2人で渡ろうとする器用さを持ち合わせていないのが遠子先輩なんだよなぁ。

ウィンディーネの夏休み編のラスト、複線として示唆された心葉たちの未来は実に明るいものになりました。

しかしこれは予想できなかった。エピローグがニヤニヤすぎる。

さりげなく芥川くんがエリート街道ましぐらだったり、心葉のシーンがとても微笑ましい。

この未来に至ることのできた感動は、8章ラストの痺れるような文章が紡いだ未来なのではないでしょうか。

本当に文学少女シリーズお疲れ様でした。

短編もニヤニヤしながら楽しみにしています。

関連エントリー

About the Author

Itary亜人:ラノベと深夜アニメが主食の装飾系(webデザイン趣向的な意味で)ヘタレ男子。
Initializing...