[読了]ひな×じん 鎖の少女と罪悪感の天秤

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あらすじ

ネットカフェに寝泊まりする少女 山野井 雛菊 《 やまのい ひなぎく 》 は、懐中時計に宿った人格(?)ジンとともに絶賛放浪生活中。その目的は、ジンを成長させる《部品》を人の欲求から回収することだが、大切な人からも部品を抜き出してしまうジンのせいで、うかうか人と親しくも出来ない。そんな生活に疲れた雛菊は、チャット友達と少しだけ会うことを決心する。それが彼女を悩ます「鎖の使者」に繋がるとも知らずに――。人の心の重さに思い悩むハートウォーミングファンタジー。

重いけど爽やかな現代ハートウォーミングファンタジー

「エイミに手を出す必要なんてないっスよ。いまからあたしがねこそぎ全部、あなたの欲求を解消してあげるから」

「はっ、何をバカなことを」

「――死にたいんでしょ?」

テーマは物凄く重いんですけど、雛菊の軽快な性格や持ち前の明るさでとっても爽やかな仕上がりでした。

主人公の雛菊が意思を持った摩訶不思議な懐中時計のジンに振り回される現代ファンタジーです。

ジンによって雛菊にもたらされた能力は、相手のある一定にまで高まった感情・要求を言い当てることでその感情は輝きを放ち、増幅させられ、ふとその感情から意識がそれた瞬間に塊としてその人から抜き出してしまうという能力。

抜き出された感情・要求の塊はジンに吸収され、要求を抜き出された当人はその感情がすっぽりと抜け落ちます。また、その要求が意識の大部分を占めるほど強いものだった場合気絶してそれにかかわる記憶ごと欠落してしまう。

しかも、雛菊にとって親しい人には言葉で引き出さなくとも相手の気持ちを認識して理解しただけで抜き出してしまう体質として定着してしまったがために、高校を休学し、愛する人の前から去って、住処を転々としながらネットカフェに住み着くようになったのがストーリーのはじまりです。

***

そんな人に説明するのも難しいような事情で放浪する雛菊の重要な協力者がとある中堅 SNS 『ミーティング・リンク』の運営会社に勤める鳴海で、彼の持ちかける仕事―ー「雛菊の能力を生かした SNS でのトラブル処理」に励むのが彼女の生業。

お互いの利害が一致することで、現在の生活を手に入れた雛菊でしたが……息抜きにただ純粋なチャット友達とのオフ会が後々大きな波乱を生むことに――。

ジンという異能な存在が際立っているひな×じんですが、作品の舞台となるのがネットでも若年層に勢力のある SNS で、ネットの世界と現実世界の狭間で交錯する世界観と心の微妙な機微を描いたテーマもとても現代的と言えますし、今この世代だからこそ生まれた作品なのではないでしょうか。

テーマがとてもホットなだけになんとも言えないリアルさがありますね~。

心の一部を奪っていく存在『鎖の少女』

果てして、そんな生活を送る雛菊でしたが『ミーティング・リンク』通称『ミンク』でも噂は流れ『鎖の少女』として噂が一人歩きします。

雛菊が『鎖の少女』として仕事をこなしていくなかで、

例え、どれだけ正当な理由があっても人の心を抜き取るという行為は許されないものなのではないかと――と苦悩していくところがしっかりと描かれていて、異能な能力に依存するだけでなく心の機微に触れるようなテーマをこういった切り口で描いたのが好印象でした。

塚原やエイミの複雑に捻じ曲がった執念のような感情を見ていると、悪い一面だけではわりきれないんだよなぁ。

そんな中でカズミとの束の間の邂逅がとても切なかった。

雛菊だけではふれきれてしまうような負の感情の塊をうまくカズミが受け止めてくれて絶妙のバランスだったと思います。

それだけに雛菊に残されたしこりを考えると胸が痛む。でもたとえカズミが真実を知ってしまったとしても許してしまうんだろうなぁ……。

そんなすべてが終わった雛菊に突きつけられたジンの言葉が

【ヒナギクに足りないのは、覚悟だ】

旗からみると間違っていると分かっている選択でも覚悟を決めることで、自分の道を貫いていけというジンの意見でしたが……これはかなり極端な意見でもありますね~。

それに対して雛菊が示した別の答え。ヘタレなのかもしれないけど、塚原のように自分を押し通せる人のほうが稀なのであって僕は雛菊の答えのほうが好きですねぇ。

高校1年生の女の子の出す等身大の答えがリアルでとても眩しかった。

ジンという存在とめぐり合ってしまったことで、極端に選択肢の少ない状況に放り出されてしまった雛菊。そんな中で罪悪感の天秤に揺さぶられることなく自我を押し通す強さを見出していく雛菊とジンの姿を見守っていきたいです。

これはシリーズなのかな!? だとしたら楽しみなシリーズになりそうだ。

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Itary亜人:ラノベと深夜アニメが主食の装飾系(webデザイン趣向的な意味で)ヘタレ男子。
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