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狼と香辛料 9 (9) (電撃文庫 は 8-9)
- 支倉 凍砂
- アスキー・メディアワークス
土地を巡って北と南が対立する町ケルーベに、伝説の海獣イッカクが陸揚げされる。町の力関係をひっくり返しかねない価値を持ったイッカクの登場で、ケルーベは俄かに騒がしくなる。『狼の骨』の情報を集めるロレンスたちも、不穏な空気を感じていた。
そんな中、イッカクの横取りを狙う女商人エーブは、ローエン商業組合を抜けて自分のところへ来るようロレンスを誘う。狼狽するロレンスのもとには、さらにローエン商業組合からも協力要請の手紙が送られてきて……!?
ロレンスの出した答えとは? その時ホロは?『対立の町』編いよいよ完結!
「では、オレの名を呼んでくれた行商人クラフト・ロレンス氏に聞きたい」
王が王宮の内部で少数の人間だけと会話をし、ほんの一握りの人間の決定だけで国を動かすのは彼らが神から選ばれし人間だからではない。
彼らもまた同じ人であり、親しい人間しか信用できないからに他ならない。
エーブは初めて出会ったコルに向かって、人に好かれるのはある種の運命だと言った。
それは、きっと、こういう意味なのだ。
「共に、裏切らないか?」
巨大な構図、商人としてのアイディンティ、機転を利かせた大立ち回り――ここ最近停滞気味だった勢いを取り戻して狼と香辛料らしさを存分に効かせた9巻でした。
一巻を読み終えたときの興奮を久しぶりに思い出しましたよ……!
「あんたは本当に商人に向かないな」
「あなたも狼には向かないかもしれません」
言葉と、前提を省略したやり取りはどこか神と聖職者の対話に似ている。
エーブは視線を暖炉に向け、目を細めて口を開いた。
「オレは誰かを利用することで今まで生きてきたつもりだったが、現実から目をそらすのもそろそろ限界だ」
今までが目の前の危機を乗り越え、商人としてただ商談をこなし、行くままに成長してきたのだとすると――。
これまでの姿を振り返り、商人としての資質を見つめ直すことになったお話でした。
目の前の構図のあまりの大きさに狼狽し、冷静さを失ったロレンスでしたがホロの言葉で再び首を突っ込む決意を固めます。
そうして一旦はロレンスを諭したホロでしたが、同時にロレンスには人を出し抜くということが向いていないとロレンスを気遣う様子にホロの複雑な心情が見え隠れしますね~。
ロレンスが出し抜かれるところは見たくない、しかしロレンスを交渉の場へと諭すことでロレンスを苦しめる結果になりかねないと苦心する姿はまさしくロレンスの伴侶 * 1 としての立ち位置を体言していたのではないでしょうか。
一方ロレンスの方はというと、行商人として生きてきた道を振り返り、自分が人の人生を奪わない規模の商売で安定した生活を営む商人像を望んでいたことを実感することになります。
人を使うことを躊躇わず、遠い地から運ばれてくる商品を羊皮紙の上で捌きながら確証がないまま決断を下す勇気と成功を見極めて疑わない図太さが必要なのだと認識させられるロレンスでしたが……。
人を騙し、人を捨て駒のように扱いながら、策を画策するのはどうしても嫌なのだけれど――目の前の戦場にワクワクと心高鳴る男の性。
結局大きな構図の駒でしかない自分でも、目の前に開けた構図から最大限利益を得ようと決意することに……。
ロレンスが一皮剥けて、大商人への道が開けた大きな起点にも見えますね。
そうは言ってもうまくいかないのが運命。大きな構図は単なる一商人の利益だけでなく……それぞれのキーパーソンの思惑が重なり政治的な色を見せ始める。
その大きな流れの中でロレンスは唯盤の上を動く駒でしかないことを痛感します。
自分の無力さを哀れみ、裏切りと疑心暗鬼の狭間で揺れ動く思考の中でエーブの真意に気づくロレンス。
自分の中で問い続けた商人の葛藤が、エーブの心情にまるでシルエットが重なり合うように一致する。
エーブの瞳の中に確信を見たロレンスは――?
エーブの仕草から垣間見える葛藤が胸を締め付けるように切なかったです。自信に満ちた瞳と、時折見せるか弱さがエーブの味わってきた孤独を印象づけてますね~。
それでも自分に非情に、ときには命までなげうってのし上がろうとする強さが眩しかった。
そんなロレンスたちでしたが……。
ここで予想だにしなかった因子によってキーマンの画策とエーブの思惑は潰えることに。
そして待ち構えるのは掛け値なしの破綻。
この展開がゾクゾクするぐらいにスリリングでページを捲るペースがとまりませんでした。
とある存在が浮上してきた謎。それに気がついたロレンス。不可能を可能にするトリックに脳汁が止まりません。そこにホロの嫉妬心が絡んできて――。
素晴らしい落とし所でした。
まさかあの構図がこういう形で決着するとは……。理解するだけでも大変な立ち回りの数々でしたが思考を張り巡らせた甲斐があったと思います。
これだから狼と香辛料はあなどれない!
終幕の1シーンがニヤニヤすぎる。
1回読んだだけでは分からず、首をかしげてしまったんですが……もう一度読み返して身悶えた。
意味を理解した瞬間に一気にきましたねぇ……ロレンスが香辛料だけにスパイスで〆ましたか。実に粋ですなぁ。
言葉に複数の意味を持たせるというのを体言していますね、支倉先生恐るべし。
その後ホロに何をされたか考えるとニヤニヤが止まりません……。
格上の大商人と対峙して、人を動かす視点を体験し、また一つ成長したロレンスがどういう物語を紡いでいくのか楽しみですね。
***おまけ***
感想を書く際に作成したマインドマップを貼り付けておきます。
思考に穴が多いですが参考になりましたら幸いです(一部ネタバレ注意)。
- もうカップルというよりは夫婦なんだよなぁ……。そしてコルはどう見ても息子。 [ ↩back ]
- 狼と香辛料(9) - いつも感想中
- Amazon.co.jp: 狼と香辛料 9 (9) (電撃文庫 は 8-9): 支倉 凍砂: 本
- 「ただいま」「おかえり」 - いつも月夜に本と酒
- Alles ist im Wandel: 狼と香辛料(9)
- 徒然雑記 : 狼と香辛料 IX 対立の町(下) - livedoor Blog(ブログ)
- 2008-09-07 - 上下の青い無限
- 狼と香辛料〈9〉 対立の町・下 | MOMENTS
- booklines.net - [支倉凍砂] 狼と香辛料 9 対立の町 下

![[読了]狼と香辛料Ⅸ 対立の町<下>](http://blog.ajin.jp/wp-content/cache/ttftitles/86e60b788abb7f2aade29ab29d80773b.png)
















