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MW号の悲劇 (電撃文庫―電撃コラボレーション (1651))
- 電撃文庫記念企画
- 渡瀬草一郎・三雲岳斗・時雨沢恵一・有沢まみず・成田良悟・近藤信義・藤原 祐・在原竹広・岩田洋季・谷川 流・おかゆまさき
- アスキー・メディアワークス
午後9時、非常ベルが鳴った。その時事件は動き出す――
電撃文庫創刊15周年を記念して、8~10月の三ヶ月連続でお届けする「電撃hp」大好評企画「電撃コラボレーション」文庫化第二弾!!
――午後9時、豪華客船MW号に鳴り響いた非常ベル。それは事件が事件を呼ぶ、波乱の幕開けに過ぎなかった。さまざまな思惑と陰謀を乗せたMW号の運命は--!? 文庫化にあたっておかゆまさき&とりしものイラストストーリーや、文庫を読んだ人にだけ分かるお楽しみも収録!!
この船は物語を生むために沈むんだよ。沈没の原因はなんだっていいのさ。とにかく沈みさえすれば自然と何らかの物語が泡のように浮かび上がる。この客船の航海目的はそれだよ
複数の作家さんによって紡がれる、一見バラバラに見える短編集が
午後9時。非常ベルが鳴った。
この一言により、同時に居合わせた乗客たちの視点で描かれた豪華客船の沈没劇という一つの大きな物語へと昇華された作品でした。
それぞれ個別に追っていくと実はこの作品に収録されている短編の9割が4年近く前に書かれた短編なんですよね~。
それを文庫に再収録して一冊の本としてまとめられたのが本作です。
一見無関係なそれぞれの短編が成田良悟さんの「蟻塚と500人の海賊」によって繋ぎ合わされ、谷川流さんの「MW号の命題」によって意味づけられる……!
この連携の巧みさが実に痺れます<ビクビクんっ>。
いや~実に面白かった。面白さというよりも構成がとにかく巧い。それぞれの乗客のエピソードがあらぬところで繋がっていて、絡まった紐が解けていくような感覚に脳汁が止まりませんでした。
一度雑誌に収録された作品ばかりですが、谷川流さんの「WM号の命題」はかなりレアな通販限定本「電撃h」に収録されたものとあって、文庫未収録作品だった本作はファンの人には必見の内容だと言えるでしょう。
それでは各作品の雑感を述べてみたいと思います。
渡瀬草一郎:『残酷劇』
唯一正統派な物語。
お姫様の退廃的な美しさと青年の熱い感情が織り成すハーモニーに惹かれます。
エリハの中の止まった時間が春斗の見せたお父さんの遺言によって再び動き出す様子が堪らなく心を揺さぶる。
あぁエリハを膝に乗せてお人形さんのようなさらさらの髪の毛を串で梳いてあげたい……。
三雲岳斗 :『DIVE TO BLUE』
なんだこれw
人間尿意を催していると大事なこととか案外どうでもよくなってしまうということですね!
それでも尿意よりも白石さんのことで頭がいっぱいなのはまぁ健康的な男子というべきなのだろうか。
それにしても遊木はドンマイとしかいいようがない。
こうも簡単に天秤にかけられてあっさり切り捨てられるとなんかもう清清しいんですが……。
魚類の人とかアレだし、全体的に緊張感に欠ける下品なお話でしたが――妙にリアルさのある(ヘタレ大学生的な意味で)お話でした。
三雲さんはこんなお話も書けるのか。
賛否は分かれそうですが僕は好きです。
時雨沢恵一 :「MW号専用掲示板「ウィー・アー・オン・ボード!」」
じわりと背筋にねっとりとした汗が浮かぶような嫌な感じのお話でしたね……。
ただ淡々と異変の様子は不気味でもあり、掲示板の住人達の真意を図りかねる様子が段々と集団悪とでも言うべき悪意に変化していく様子はなんとも後味の悪さを感じました。
後味は悪いのだけれど、人間の醜い部分が垣間見える一面を切り取ったような視点の鋭さを感じる辺り流石だなぁと思います。
有沢まみず :『万年すだれ禿係長小保田喜八郎の冒険』
リストラの憂き目に遭い哀愁漂う中年男の冒険活劇。
守るべきものを見つけた男が見せる表情というか、格好いいんだれど微笑ましい。
爽やかに散る(髪の毛じゃないよ!)男の生き様を最後に見せ付けてくれました。
まぁしかしオチを見るとああやっぱりな、という感じなんですが……w
成田良悟 :『蟻塚と500人の海賊』/『『魔法のランプ』航海日誌』
正統派海賊伝奇。
悪党になりきれないお人よしの海賊、そんな野郎どもの熱い熱い物語。
すべての物語を繋ぎ、隅々まで張り巡らされた根の母体となる大木のようなお話でした。
やはりというか、成田さんはこういうごちゃごちゃとした賑やかなお話を書くのが格別に巧いなぁと感じます。
さまざまな人物が行き着いたそれぞれの結末に胸が躍らされっぱなしです!
荒神の豪快な笑顔が思い浮かびますねぇ。
近藤信義:『Les Aventures ~冒険者たち~』
なんというツンデレ。
世にも奇妙な組み合わせとでもいうような三者三様の描写が面白い。
いつも冷静でいるけれど肝心なところでは熱い朝登のハードボイルドっぷりが見所です。
でもやはりツンデレ。
藤原祐 :『HERO』
あぁこれはひどい(オチ的な意味で)。
散々カッコいいシーンを見せてつけてくれちゃってラストはソレですか!!
例によって君望とはw
完全無敵のサイボーグだけど中身はヘタレで生粋のオタク、そんな前衛的なヒーローを描いた作品でした。
妹が黒髪でメガネで委員長系だったら萌えたんだけどなぁ……。
在原竹広 :『内藤君と水野君の場合』
無目的室の人 でしたか。
男友達二人で豪華クールズの旅……泣けてくる。
なんともシュールな二人の掛け合いが逸脱でした。
ただ、未来が分かっているような言動は気持ち悪さを感じたんですが続く谷川さんの短編で納得(?)したようなしないような……。
斜め上をいくボケと冷静につっこむ様子がなかなか微笑ましい。
じわじわときますねぇ。
岩田洋季 :「Sisterhood」
これはお姉ちゃんに萌えましたね。
普通じゃないけど周りとのギャップを考えると結構普通な姉妹の物語。
ありがちに見えるのだけれど、なんといっても姉が無敵なのがポイントでしょうか。
あぁこんなお姉ちゃんに理不尽な仕打ちを施されたい。。
三日干しの刑よカモンっ<びくびくびくんっ!>!!
谷川流 :「MW号の命題」
よくも悪くも非常に谷川さんらしい作品。
面白いかといわれれば非常にコメントに困るんですが、これが4年前に書かれた作品だといわれると感慨深いものがあります。
ハルヒの前身となるような<谷川流哲学>を垣間見れますね。
命題と言うわりには論理の飛躍が見受けられますが、個々のシーンをみると完成度も高く、落ち着き払ったカップルのシーンはとても素敵でした。
滅びの美学は唱えているときが一番美しいんだろうなぁ。
おかゆまさき :「MW号だよ! びんかんサラリーマン!」/「応答せよ! びんかんサラリーマン!」
こwwれwwはww
流石というか相変わらずな先生に脱帽です。
こんな(変態な)お話おかゆさんにしか書けない。
幕開けのプロローグで盛大にやらかし、衝撃的な内容で可憐にオチをつける……。
成田さんが繋ぎ、谷川さんが定義したこのMW号を舞台とする壮大なストーリーを最後の最後でお祭りにして幕閉めする役割を果たしていたと思います。
まぁ真剣に感想を書いてみましたが要するに……ビクビクビウンっ!!ピクピクピクピクピククンっつ!!! はふぅ!
……ということですw
いや~これは凄まじかった。腹筋に来る笑いではなくて頬の筋肉が無理やり釣りあがって引きつるような感覚と言ったら分かりやすいでしょうか。
ニヤける顔が引きつるくらいの吸引力。
一々敏感に感じる一郎のリアクションがこの上なくウザいんだけれどニクめないんだよなぁ。
野郎が感じていても気持ち悪いだけだよ!!
なぜ南さんを出さないんだ!!!<びくびくんっ!>
まとめると
前回の電撃コラボレーションとは違い、それぞれが巧みに連携された形でまとめられた作品でした。
豪快な野郎っぷりや幼い少女の必死の捜索劇、かたや一方では世界一敏感なサラリーマンによる<敏拳>が繰り広げられていたりと凄まじいボリュームの詰め合わせ小説でした。
まい・いまじねーしょんが綺麗に並べられたオードブルならば、こちらは何でもごちゃまぜの海鮮丼のような味わいです。
好みな作家さんだけでなく、新たなベテラン作家さんを開拓できるのがコラボレーション作品の大きな魅力ではないでしょうか。
まだまだあるそうなので第三弾も楽しみです。
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