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七歳美郁と虚構の王 (ガガガ文庫 く 1-1)
- 陸 凡鳥
- 小学館
1999年末に起こった世界同時多発テロ《拡大人的破壊》。破壊を実行した男の名は外木場外郎。そして彼を告発した、“救済の女王”九重白雪。事件から数年、九重探偵事務所の所長代理・今近衛久遠のもとに、白雪からの葉書が届く。「世界で二番目に強い刺客を送ってみました――」遣わされてきた男の狙いはひとりの少女・七歳美郁だった。彼女を護るため、久遠は自らに与えられた力を解放する。それは世界最強を謳われた男をこの世に召喚する《プログラム》だった! 第2回小学館ライトノベル大賞・佳作受賞作。
それでもあのひとは痛くないふりをするのです。私の前では心配をかけまいと、不器用に振舞う。世の中には格好付けが多いみたいですね? まるで三流の道化師です
ガガガの新人さんの作品群で3作目となる本作ですが、一番ガガガらしい作風だったのではないかと思います。
序章の穏やかで平和な情景描写が、嵐の前の静けさといった出で立ちで嵐の幕開けを予兆しているようでした。
全部読み終わってから改めて冒頭のシーンを見直してみると心臓を締め付けられるように切ないんだよなぁ。
外木場外郎によって引き起こされた<拡大人的被害>。
そして、その全貌を明らかにして世界の救済を唱えた九重白雪。
歴史の一幕に大きく刻まれることになった大事件によって運命を狂わされた登場人物たちの力強く生きようとする壮絶な生き様を描いた作品でした。
美郁の前では道化を演じながら、気取られずに努力する一方自分を投げ打ってでも美郁を守ろうとする久遠。しかし美郁にはすべて筒抜けですべてを把握しながらも騙されている”ふり”をし続けるんですよね。
そんな美郁も実は秘密をもっているのだけれど、誰かのために自分は生きつづけないといけないと思う強い信念は義兄妹揃って大変よく似ています。
芯の通った強い人物像が美しい……。
そして仇敵として久遠たちの前に現れる「世界で二番目に強い」暗殺者の枯野もまた、過去に犯した自らの過ちの呵責に耐え切れずに抱え込んで刺客として甘んずる道を選んでしまう……あぁどうしてこうもみんな真っ直ぐで不器用なやつらばっかりなんだよ!!
ここで本編の基幹となる<救世主殺し>にふれてみます。
読んでいて疑問に思ったのが果たして個人の人格が帰納的に求められるのだろうかということです。
他人から見た人格は本人にとっては「≠ ノットイコール」でしかないのに、それを寄り集めたところで「≒ ニアリーイコール」にはなりえないと僕は思うのです。
ましてや本人のコピーが出来上がるとは思えない * 1 。
いくら多角的に沢山の構成要素を集めたところで「≠ ノットイコール」の寄せ集めに過ぎないのではないか―ー。
異能な上に成り立っている世界観であっても若干の不和を個人的な意見ながらも感じました。
しかし、それがそれほど重要な問題ではないのはあくまで物語の基幹的な要素であっても求められる主題ではないからなんですよね。
<プログラム>として形成された人格という存在そのものが、運命を枉げられた人物たちの悲しい慟哭を印象づけているようでした。
いささか情報過多で過装飾な世界観はある意味、書きたいことをしぼってシェイプアップした「 コピーフェイスとカウンターガール 」と対極を成す作風でした。
「 コピーフェイスとカウンターガール 」が綺麗な一本線を描いてストーリーを描写しているとすれば、「 七歳美郁と虚構の王 」は細かな欠片をいびつに凝り固められた塊そのものがストーリーだというような感触です。
ただ、これが描きたかったんだという強いメッセージ性が感じ取れる点では両者とも共通していると思います。
個人的にはかなり好みな雰囲気でしたね~、好き度ではコピーフェイスに一歩およびませんがシリーズものとしての期待度は間違いなく一番ですね。
これはまたひとつ、楽しみなシリーズが増えました。
因みに、美郁のように可愛くて腹黒い毒舌な女子中学生は大好きです。
(美郁の一人称視点が実に心地よかったですねー)
- ただ戦闘能力に限っては有益だと考えられるかもしれませんね。 [ ↩back ]


















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