[読了]超人間・岩村

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あらすじ

第7回SD小説新人賞佳作!

不可能を可能に、絶望を希望に!

妙見宮高校に一人の男がいる。名は岩村陽春。アメコミ同好会に所属し、友人の多村やマルカーノのともに日々を送る彼は「無理」や「不可能」という言葉を聞くと行動を開始する。それが本当に「不可能」な事なのか、それとも「可能」なのかをを見極めるために。安易な「諦め」や「絶望」を、この世界から駆逐するために。人はそんな彼を『超人間』と呼んだ…! 一方、新聞部一年・高津五月は先輩の杉浦夜那とともに『超人間』の密着取材を命じられるが、なぜか演劇の主役を演じることになってしまい!?

これぞ燃え、怒涛の「超人間、誕生」

それでも、ジュリエットはロミオを愛していたんだよ

これは見事に心の琴線にふれた! 鳥肌が止まらない。

魂が奮い立つような燃えノベル。間違いなくこのライトノベルがすごい! とおすすめできる良作でした。

まず、構成の巧さに驚かされます。

2つのエピソードから語られる岩村陽春の超人っぷりが実にテンポ良く読者を飽きさせない。

最初のエピソードは旨みを濃縮したように軽快で、あっという間に超人間・岩村の世界に魅了されます。

そして次のエピソード――奮えるような白熱の演劇「ロミオとジュリエット」に乗せて各人物の内面からそれぞれのパーソナリティが描かれることで物語に厚みと説得力を付加することに成功しています。

それぞれ重い過去をもち、強い意志で自己決定をくだしている姿が描かれることで俄然説得力が増すんですよね。

良くも悪くも彼らは大変人間くさいのです。

ライトノベルにありがちな薄い人格設定で人形のように振舞う”キャラクター”ではなく、内面からあふれ出る人間の温かさがこの作品にはあります。

この人間味溢れる温かさが物語に居心地の良い空間を演出していて、あぁ自分もこの空間に居ていいんだと感じさせてくれるのです。

この奇妙な包容力が、本作の大きな持ち味だったのではないでしょうか。

ただの学園部室モノとしてではなく、それぞれの濃厚なヒューマンストーリーとして描ききったところに作者の圧倒的な筆力の高さを窺い知ることができましたね。

そして、この世界観を構築する決定的な要素――何よりtoi8さんのイラストが大変素晴らしい。

独特の温かで優しい心地良さがうまく醸し出されていて堪らない。

これがもし、シャープなエロゲー風イラストならこの暖かさは出なかっただろうなぁ。

個人的には

夜那のエピソードが好きでした。

夜那が風評で避けられていた要因自身が、僕の大好きなものだったということもあるのですが何より聡明な表情に強い決意が溢れているから好きなんですよね。

常に堂々としていて後悔を感じさせない振る舞いが美しい。

決して自分の気持ちに背かず、クールに振舞おうとするのだけれど、どうしようもなく思いやりに溢れた優しいまなざしが彼女の魅力をより印象づけていたと思います。

沢山の見せ場があった本作ですが、あえてひとつ挙げるなら夜那と五月の本音を孕んだ劇後の演出考察を語りあうシーンですね。

普通に読み解くと主人公の岩村にスポットライトのあたる本作でしたが、別の人物の視点から見ることで物語に新たな一面が顔を覗かせます。

「ロミオとジュリエット」の劇中劇で登場人物の内面に秘めた感情が明らかになり――ある出来事を元に悪評が立ちながらも自信をもって自分の魂に従う夜那、未知の感情だった恋を自らを夜那に投影して演じることで抜群な才能の片鱗を見せ付けた五月、奮える感情の渦に感覚を刺激されたことでプライドの高さと冷酷な一面を垣間見せた森会長、人間味を感じさせた重みのある人物描写がそれぞれのストーリーに新たな解釈を与える結果になったのではないかと思います。

そして、主人公の岩村に「超人間」の異名をとらせるまでの熱意は、どうしようもないほど重い傷跡の裏返しなのだけれど……ただ行き場を持て余した激情に苦悩しながらも必死に心の均衡を保とうとする様子に心を打たれるんですよねぇ。あぁなんて不器用なんだろう。

そんな岩村の苦悩を受け止める、多村とマルちゃんの友人としての器の大きさがとても素敵でした。

互いが理解して思いやり合う姿が愛に溢れているんだよなぁ。

あぁ素晴らしい作品だった。

これはこのラノ09の投票枠をひとつ空けないといけないな。

まさかの大本命でした。

この作品はぎりぎり9月刊と対象作品リストに含まれているので、たとえ票が少なくとも是非とも1票入れたいところ。

間違いなく、このライトノベルはすごい。

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Itary亜人:ラノベと深夜アニメが主食の装飾系(webデザイン趣向的な意味で)ヘタレ男子。
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