[読了]イスカリオテ

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イスカリオテ (電撃文庫 さ 10-5)
イスカリオテ (電撃文庫 さ 10-5)
三田 誠
アスキー・メディアワークス

あらすじ

『レンタルマギカ』『アガルタ・フィエスタ!』の三田誠、待望の新シリーズ登場!

一年間だけ、死んだ兄のふりをしてほしい──。

そう乞われ、九瀬イザヤが降り立った御陵(みささぎ)市は、七つの大罪を具現する〈獣〉(ベスティア)と戦うための都市であった。

地脈の特異点より現れ、人を喰らい、街を蹂躙する〈獣〉。それに対抗しえるのは、神の奇蹟を模倣するという断罪衣(イスカリオテ)と、少女の姿をした第九祭器・ノウェムだけ。

「この街は、あなたを愛するでしょう」

そう告げたノウェムとともに、イザヤは兄のニセモノとして、この都市で〈獣〉と戦うことになるが……。

三田誠が放つ、罪と罰の織りなすアイロニック・アクション、開幕!

イザヤ、諌也を襲名する

我は模倣する――聖ゲオルギオスの槍を

***

偽者はやがて本物へ。

おおおお、燃え上がるクライマックス。

諌也の”偽者”として救世主を演じることになったイザヤがやがて本物へと昇華していく展開には酩酊感を伴いながら引き込まれましたよ。

救世主とは演じるものなのだ――と示されたとおり、イザヤの振る舞いはある意味本質をついたというわけですね。

人々を導く存在としての自分になりきった双子の兄、諌也のように。

根の性格はまるで違うものの、そのヒーローの仮面を被ったカリスマ性溢れる立ち振る舞いや、神がかり的な飲み込みの早さは流石双子の兄弟といったところ。イザヤもなかなか様になっているじゃないか。

そう思うと、

自分にだって分かる。

こんな自分にだって分かってしまう。

久瀬諌也。

お前は死んじゃいけなかったんだ。

このイザヤの切実な思いが痛いほどに響いてきますね。

先に救世主という立場を築きあげた、その手腕を認めているからこそこれほどまでにその今は亡き存在を渇望する。

だけれども、イザヤにもこの救世主としての存在が務まるのだよと証明された形のラストでしたね。

断罪衣<イスカリオテ>を身に纏い、自分の存在を証明するかのごとく宣誓には痺れまくった。

いや~、痺れた。これは胸の内の熱い部分が揺さぶられましたね。これぞまさしく男の物語。

そのイザヤの支えとなるのがノウェムという存在

「いかがですか?」

「わ、悪くねぇ」

「良かった」

――

笑うのか、この人形。

イザヤがカルロや玻璃のように諦め、もしくは使命感と取り繕った諦観から運命に身を委ねるような生真面目な男ではない、というのは冒頭で十分に描かれていました。

では何故、イザヤは逃げ出さずに<獣>ベスティアに立ち向かおうと踏み出すことができたのか。

答えはノウェムの存在にあったのではないかと思います。

イザヤ自身も自覚していないのだけれど、これは恋心のようなものなのかな。

イザヤが久瀬諌也として世界を騙しつけている裏で、唯一彼の存在を認め、全面的に肯定してくれるノウェムが心の支えになったのは言うまでもないでしょう。でも、それだけじゃ無いのかもしれない。だってこんなにも可愛いのだもの。

「やややっばい! ノウェムさんの中華ちまき美味しい! 何これ何これ! ちょっとこれ反則! 飛び道具とは卑怯なり!」

「飛び道具と定義される物体を、ちまきに入れた覚えはありませんが」

「しかも天然! か、会長! このシスターやばいです!(中略)」

あぁ、こんな的外れな受け答えをしてしまうノウェムが萌える萌える。

基本的に無表情キャラなのだけど、ときたま見せる表情の変化がグサリとくるのですよね。

いや~これはやばい。冒頭の台詞、「良かった」で見せてくれた笑顔は失神して仰け反りそうになりました。

僕もつくづく人外キャラが好きだなぁ。

こんな可愛いノウェムたんにメロメロになったイザヤが、お前を放っておけるかあああああ(意訳)と突っ走る姿は正しく青春そのもの。嘘っぽい説法 ((学園でのシーンで諌也の仮面で説教を解きながらも、内心でツッコミを入れていたのも好ポイントですね。しっかりと流れを理解した上で誰でも思うようなツッコミだからイザヤの言葉は信用できる))で裏づけされた言葉なんかよりもよっぽど真っ直ぐで説得力のある動機じゃないですか。

ノウェムがそうしたように、イザヤも全面的にノウェムを信じきったからこそ強欲の<獣>に打ち勝つことができたんじゃないかなぁ。

僕が思うに、カルロや玻璃に足りなかったのは他者を信じる気持ちだったんじゃないかなと思うのです。

信仰として神様を信じる一方、自己愛ならぬプライドがそうさせるのか分かりませんが、自分ですべてを抱え込もうとするのは他者が信用できないことの裏返しなのではないかと思ったのでした。

だからこそ、危機を作り出してしまうはめにもなるし、打ち勝つことができなかった。

イザヤがノウェムを信じることができたように、嘗ての諌也にも信じることのできた大切な人がいたんじゃないかな。

今はまだ最小限でしか語られなった人と人の心のつながりでしたが、巻が進んでいくにつれこちらの描写にも力を入れてくるんじゃないかなぁと思うと続く展開が大変楽しみなのです。

やはりこの物語は

いや~やっぱり三田さんしか書けない物語だなぁと改めて思いました。いつもの三田作品的な持ち味を生かしつつ、そのモチーフは川上稔的と大変濃い仕上がりとなっております。

題材は良くある聖書を交えたお話なのだけど、この人は群を抜く構成力で見せつけるなぁ。レンタルマギカは膨大な薀蓄を交えた魔法で彩られた世界観を描きながらも、リアルで重みのある人物描写も抜かりがなくて日常の風景も大事に描かれていたのですが、この作品は存分にその豊富な知識を生かして全力で異能バトルを描きたいという情熱がひしひしと伝わってきて燃えました。

細かな人物な繋がりよりも、全力で聖書を基幹にした現代科学バトルを描きたいんだ!!!

第1巻はその迸るエネルギーを存分に放出して描かれていたのではないかと思います。

聖都は失われ、救世主も失われ、困窮状態に陥った現代都市御陵市。

人々が日常の生活を取り戻しつつある中で、その都市は見えざる裏側で七つの大罪を具現した<獣>ベスティアと戦うためのものだった。

そんな時代風景の中で、綿密に練りこまれたバトル背景が素晴しかったですね。

ただ、僕はバトルものはあまり得意じゃなかったので個人的な印象としては1巻の平均的な面白さは目減りしたかなぁ。

その実8割がたがバトルなので、バトルが苦手な人にはちょっと好みが分かれるかもしれません。

しかしながら、終盤の盛り上がりには震え上がった。やっぱり三田さん ((余談ですが、「みた」先生だと思っていました。読み方は「さんだ」先生だったのですね))の書くお話は大好きだなぁ。

その膨大な薀蓄も、ひけらかされるようなこともなしに惜しげもなくバトルの背景設定に費やされたのも好印象でしたね。

そして、バトルシーンだけでなく登場人物も素敵なのがやはり大きなポイントだと思います。

このお話は是非とも追いかけていきたいなぁと思ったのでした。

……あぁ、僕にもノウェムがお弁当を作ってくれたらいいのに。

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