今年もあと1日。ライトノベル事情も行く年来る年というわけで、今年2008年に勢いのあった激動のシリーズ作品を、それぞれの切り口から10作品選出してみたいと思います。
――序章からいきなりクライマックスの盛り上がり
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境界線上のホライゾン1〈上〉―GENESISシリーズ (電撃文庫)
- 川上 稔
- アスキーメディアワークス
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境界線上のホライゾン1〈上〉―GENESISシリーズ (電撃文庫)
- 川上 稔
- アスキーメディアワークス
今年のライトノベル作品はこれ抜きでは語れない。川上 稔の3年ぶりの新シリーズとあって、獅子奮迅の勢いを見せつけてくれました。もうシリーズ1の上巻からクライマックス。溢れるような興奮の洪水を前にページをめくる手が止まらない。本文500ページ超ですがあっという間です。そして下巻は更なる怒涛の展開を以って、上巻の興奮を塗り替えた。いや~もう堪んない。愛情溢れる掛け合いに、奮えと鳥肌が止まりません。そんな僕はセージュンのひんぬー政治家という新しすぎる属性にノックアウトされたのでした。
上下巻あわせて1300ページオーバーと異常なハードルの高さですが、まだ今なら間に合います。
買ってまだ積んでいる人は特に早く手をつけなさい! 勿体ないですよ!! (既刊2巻)
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ANGEL+DIVE〈1〉STARFAKE (一迅社文庫)
- 十文字 青
- 一迅社
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ANGEL+DIVE〈1〉STARFAKE (一迅社文庫)
- 十文字 青
- 一迅社
これは3巻で化けた。1・2巻の不明瞭な世界観が嘘のように崩壊を起こした第3巻。そのあまりにもの急展開にあっけに取られてしまう。
退屈でつまらなくてどこか空虚で、けれど平和で愛おしくてかけがえのない日常が一瞬で崩壊してしまう様に息を呑みました。
あまりにも理不尽で受け入れがたいそれは、まさしく死に抱く感情そのものなのではないでしょうか。こんなにもリアルな死がすぐそこにある。
ラベンダーの花に込められた花言葉、その孕んだ2面性を指し示すように、期待が疑惑へと変わり、やがて臨界点を迎えたそれは噴出す運命のねじれによって完全な沈黙を迎える。
予想を超えた凄惨な結末によって幕を閉じた第一部。ドラマチックな劇画調で語られる超弩級シリーズは第二部へと引き継がれた。
何気に3巻で1200ページの特大ボリュームです。巻数こそ違いますが、同じく1200ページオーバーの分量で描かれたシリーズ第一部。GENESISシリーズの勢いに並べるシリーズは間違いなくANGEL+DIVEのみ。(既刊3巻)
――来る終焉の時、最後の山場を見せ付ける
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SHI-NO-シノ- 過去からの招待状 (富士見ミステリー文庫)
- 上月 雨音
- 富士見書房2008-12-20
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SHI-NO-シノ- 過去からの招待状 (富士見ミステリー文庫)
- 上月 雨音
- 富士見書房2008-12-20
富士見ミステリー最後の砦。その終焉への道筋を飾る2大シリーズの片腕とあって、8巻辺りからいよいよ佳境に差し掛かったSHI-NO-シノ-シリーズです。小学生ダークヒロインの志乃ちゃんが見せる空ろな表情が気になります。やはり、未来を見通せる”僕”の元カノの存在は、過去へと遡る重要な伏線だったのかな。いやはや、最後まで目が離せません。(最新巻中表紙で見せてくれた志乃のちゃんの真っ白な背中的な意味で。(既刊9巻)
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とらドラ!〈7〉 (電撃文庫)
- 竹宮 ゆゆこ
- アスキーメディアワークス
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とらドラ!〈7〉 (電撃文庫)
- 竹宮 ゆゆこ
- アスキーメディアワークス
これは僕が今一番気になっているシリーズ。4巻で影を見せた崩壊の兆しは、7巻の展開によって現実のものとなる。1巻1巻で見れば、そのエピソード自体は特筆するところがないように見えるのですがそこに描かれた一貫したテーマにこんなにも惹きつけられてしまいます。緻密に練られ、驚くべきまでに精緻に描かれた人間模様と、鬼気迫る心理描写は他に類を見ません。格好悪くて泥臭い青春がそこにある。そのライトな外見に騙されてはいけない。これこそまさに文学をライトノベルのフォーマットに収めることに成功した代物なのだ。これが模索された末にようやく生み出された、ライトノベルにみた文学的表現の形なのではないだろうか。
シリーズ全編でみれば間違いなく僕の中で一番のシリーズ。
等身大の高校生のすべてが描き出されています。今からでもまだ間に合います。1~3巻まではごく軽いですが、4巻まで読んでください。そうしたらこの作品に込められたエッセンスに気がつくはず。未読の方は是非お手にとってみることをおすすめします。9巻の終始張り詰めた展開には仰け反りましたよ。(既刊10巻:スピンオフ含む)
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狼と香辛料 9 (9) (電撃文庫 は 8-9)
- 支倉 凍砂
- アスキー・メディアワークス
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狼と香辛料 9 (9) (電撃文庫 は 8-9)
- 支倉 凍砂
- アスキー・メディアワークス
9巻で再び巻き返した! 狼と香辛料ここに返り咲き。巨大な構図、商人としてのアイディンティ、機転を利かせた大立ち回り――ここ最近停滞気味だった勢いを払拭してくれました。いや~堪んない。1巻で受けた衝撃を彷彿とさせる見事な商戦に舌を巻きました。シリーズも佳境でこの盛り上がり。このシリーズにはまだまだ期待できそうです。ただ、このシリーズをどう見てるかで評価は変わってくるかな。商戦として見ている人にはこの上ない盛り上がりでしたが、ホロとロレンスの愛の逃避行と見ている人には成熟した関係に少々物足りなさを感じるかも。久しぶりに痺れる巻き返しを見せてくれた狼と香辛料。ここからどういう旅路を辿っていくのか見守っていきたい。
――お疲れ様でした、ただその一言を胸に秘めて
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“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫)
- 野村 美月
- エンターブレイン
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“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫 の 2-7-1)
- 野村 美月
- エンターブレイン
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“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫)
- 野村 美月
- エンターブレイン
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“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫 の 2-7-1)
- 野村 美月
- エンターブレイン
ラノベラーの今年の関心事といえば、間違いなく文学少女シリーズの完結でしょう。延々と暈されながらも、徐々に像を結びつつあった遠子先輩の出生の秘密に息を呑みました。最終章上下巻の勢いは凄まじいものがありましたよね。敢えて語るならば、お疲れ様でした。この一言に限る。まだ手をつけていないながらも、興味を持っている人は12月に刊行された文学少女初の短編集をお手にとってみては如何でしょうか。本編をすべて読み通してきた人には非常に感慨深い一冊なのですが、入門編としても大変適しているのではないかと思います(理解できないネタバレはネタバレにならないメソッドに基づく)。文学少女の魅力が沢山つまった1冊です。是非ともご覧あれ。(全7巻+挿話集既刊1巻)
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さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)
- 杉井 光
- アスキーメディアワークス2008-12-05
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さよならピアノソナタ (電撃文庫)
- 杉井 光
- メディアワークス
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さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)
- 杉井 光
- アスキーメディアワークス2008-12-05
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さよならピアノソナタ (電撃文庫)
- 杉井 光
- メディアワークス
これ以上ないくらいに綺麗なラストで締めくくられたエンディングに奮えが止まりません。
物語はここで終わりを告げても、直巳や真冬たちの日常はいつまでも続いていく。
終わらせる、ということにここまで深い美学を感じ取った作品は初めてでしたね。
これは間違いなく杉井光の中で代表作となることでしょう。
全四巻と非常に手を出しやすいシリーズなので是非1巻からお手にとってみてください。こうして改めてみると1巻の表紙が実に感慨深い。(全4巻)
――咲、逢いたかったよ!
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付喪堂骨董店〈4〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)
- 御堂 彰彦
- アスキーメディアワークス
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付喪堂骨董店〈4〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)
- 御堂 彰彦
- アスキーメディアワークス
これには驚いてあまりの嬉しさに仰け反りましたよ。唐突な断絶を向かえ早1年。音信不通のシリーズにもうダメかもと半ば諦めていましたが、4巻発売のニュース来報に心底驚きました。決して大きなシリーズではありませんが、間違いなく熱烈なファン層(主に咲フリークと思われる)を抱えているオンリーワンな佇まいのシリーズです。
いや~この骨董店のレトロな雰囲気と、安楽椅子探偵を彷彿とさせるミステリーな香りが堪んないんだ。そして咲の腋から放たれるフローラルスメルも。ああ、思う存分嗅ぎ取りたい。あ~んもう咲たん大好き!(既刊4巻)
――胸打ち奮わせる感動が、ここにある
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超人間・岩村 (集英社スーパーダッシュ文庫)
- 滝川 廉治
- 集英社
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超人間・岩村 (集英社スーパーダッシュ文庫)
- 滝川 廉治
- 集英社
これは魂が奮えました。10選というとこれははずせないよなぁ。魂に直接訴えかけてくる熱い男の物語が極上の調べを奏でるのです。だけれども、そんな男臭さにどこか気品溢れる耽美な知性を醸し出すのですよ。男臭さと、女性陣の品の良い空気感を併せ持った知性溢れる至極の燃えノベル。魂と魂のぶつかり合いを垣間見た。これからの展開に是非期待したい。(既刊1巻)
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機械じかけの竜と偽りの王子 (電撃文庫)
- 安彦 薫
- アスキーメディアワークス
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機械じかけの竜と偽りの王子 (電撃文庫)
- 安彦 薫
- アスキーメディアワークス
これは思わぬダークホースでしたよ。この作品は気合を入れて全力で挑まなければならない、そんな言い知れぬ迫力と緊張感を合わせもった作品です。新人さんでこの貫禄は凄すぎる。遥か古代に繰り広げられた歴史の裏側を垣間見たような至極の歴史ロマンを感じさせる1品。その中で、太古の昔という時代背景とは裏腹にオーバーテクノロジーを以って稼動する機巧鎧《アームネイン》が大変特徴的です。その細部のディテールよりも緻密に計算された壮大なスケール感に圧倒される。流れを押さえた壮大な決戦の迫力には息を呑んでしまいます。そして、その裏側で繰り広げられる愛情溢れる人間関係にうっとりとしてしまうのです。そうした空気感が、壮大なスケール感が溢れる中にも確かなロマンスを感じさせて美しすぎる世界観に鳥肌が止まりません。いささか小難しいきらいのある文体ではありますが、是非身構えて読んでみてください。その熱い魂の躍動はきっと伝わるはず。(既刊1巻)
今年のライトノベル界隈は実に激動の1年だったのではないかと思います。まずは、一迅社文庫の創刊に、メガミ文庫のリニューアル。徹底したPRの甲斐あってすっかり一レーベルとして悪くない位置に定着した一迅社文庫とは対照的に、メガミ文庫は驚くほど話題にならなかったような気がします。その辺りの細かい話はここでは置いておくとして。一迅社文庫からも今年の10選に入る超弩級シリーズが誕生したのは嬉しい限りです。間違いなくANGEL+DIVEは同文庫の看板シリーズとなるでしょう。この衝撃は間違いなく凄まじかった。
そして次に、紅の醜悪際に纏わるネット界隈で繰り広げられた騒動と、文学少女シリーズ堂々の完結が忘れられないニュースとして話題をさらったのではないかと思います。
特に文学少女シリーズの完結は実に感慨深い。
最終章のあまりにもの鬱屈した空気感を、見事に払拭して綺麗に終焉を迎えたシリーズに拍手を送りたい。こうして遠子先輩の真意が描かれることで、文芸部でのかけがいのない日々がまた違った側面をもって見えてくる。これがもう感慨深いったりゃありゃしない。
そして、今年のライトノベル作品の勢力図はおおむねこの このライトノベルがすごい! 2009 (→ [読了]このライトノベルがすごい! 2009 )に集約されているといっても過言ではないでしょう。
堂々の完結を迎えた文学少女シリーズが作品・イラストレーター部門ともにトップの栄冠を飾り、それに並ぶ形でとらドラ!が2位に付けてきたのが実に納得できる。
電撃作品のアニメ化ラッシュによって拍車をかけた作品人気ですが、とらドラ!はその名に恥じない完成度を誇っていると言えるでしょう。
あとは、ライトノベル作家や読者に纏わる内輪ネタが流行ったことでしょうか。GA文庫から杉井光の「 ばけらの! 」、MF文庫Jから平坂読の「 ラノベ部 」が、メタ視点からライトノベルというものを切り取る試みにチャレンジしていたような気がします。しかしながらまだまだ模索してる感が漂うのもまた事実。これに続く形でガガガ文庫から桧山直樹の「 ブック×マーク! 」がメタ視点を取り入れたギミックを披露しましたが、いまいち中途半端感が否めません。業界に纏わるパロディが出始めたのは成熟の証。まだまだ模索中とあって、2009年も再びその試みは繰り広げられていくことでしょう。
こうして幕を閉じた2008年のライトノベル界隈。
まだまだライトノベルを読み始めて1年弱と暦の浅い僕ですが、独断と偏見を以って非常に濃いラインナップを選出してみました。
その根拠は一部総評で示しましたが、つまるところ僕の好みということであります。濃くて狭い作品を愛す!
来年はもっと精力的に読み進め、もっと広い視点で楽しみながら見ていけるよう心がけていきたいです。
それでは皆様、よいお年を。また2009年に会いましょう。



















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