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付喪堂骨董店〈5〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)
- 御堂 彰彦
- アスキーメディアワークス
付喪堂に不釣合いに置かれたパソコン。先端科学の利器とは縁遠い無表情な少女はどう扱っていいかわからない様子です。わいわい騒ぐ様はのどかで平和そのものですが、それだけお店は暇なのでした。客と巡り合えなくても、アンティークとは巡り合えてしまうのが不思議なもの。こんな物がありました。懸賞が当たった、テストのヤマが当たった。そんな思いもかけぬ幸運をもたらすというバングルがあるのです。ですが、その見返りが周りの人の不幸だとしたら…。周囲が苦しむのを見て、人は幸せに思えるのでしょうか。あなたはいかがですか。
「ねぇ、もしわたしが一緒にここに残りましょうと言ったら、あなたはどうする?」
うわあああ、咲の想いはこんなにも切羽詰っていたのか。
いやはや、2章辺りまで読んで今巻はイマイチかな~なんて思ってたんだけど、全然そんなことなかった。3章の咲の心情を鑑みると、胸が痛いです。
今回の第五集は、
- ある条件と引き換えに幸運を呼び込むバングルを巡る「 幸運 」
- 世界中の悪意が封じられた壷に隠された、知ってはいけない真相とは――が描かれた「 希望 」
- 言葉では伝えられない想いを、望んだ人に望んだタイミングで届けられる葉っぱコトノハを巡る「 言葉 」
- 都和子さん曰く「社交辞令」によって、デーt……もとい買い物をすることになった刻也と咲が微笑ましい「 本音 」
以上の4つのエピソードから構成されています。しかしながら、その裏には一貫したテーマがあったんじゃないかな。
それはずばり、刻也と咲を巡る関係性の深刻さ。
例えば、目の前に大切な人との永遠を示されたのならば、その先に待っているのが終わりのない破滅だったとしても、あなたはその人との永遠を望みますか――?
と、問われた第五集だったのではないかと思います。いつも日常的に感じている不安感がこういう局面においては箍が外れちゃうのよね。わたしの大切な人が離れていってしまうかもしれない。でも未だ踏み出すことが出来ないでいる。きっとこのままではいけないんだ、でもどうすればいいの―-という自己矛盾が、アンティークが引き起こした永遠の可能性によって破滅のifへと帰着しようとは思いもしませんでした。
切羽詰まった二人の関係が様々な方向性から描かれています。
咲をこんなにも突き動かすものは一体何だったのかな? 咲の過去が、踏み出せない理由を作っているのかな? だけども、今こうして咲が悩んだという事実は紛れもなく現在の彼女を表しているんですよね。そう、現在の彼女自身なのだ。そんな咲に対して刻也の行動とは――。
なるほど、中々に傲慢で――けれどどうしようもなく優しいじゃないか、刻也は。
いやはや、こんなこと言っちゃうから危なげながらも安心しちゃうのよね。これだから刻也は侮れない。あまりの優男っぷりに呆れを通り越してため息をついちゃいましたよ。
恋人ではないながらも、恋人よりも近い位置にいる二人の距離感が絶妙でありました。
アンティークによって引き起こされた出来事によって、一時はどうなるかと思うくらいに身の破滅を引き寄せてしまった、けれど、そんな局面においても二人の間の帰着点を見つけることが出来たと証明されたのだとも思います。
この距離が二人らしくて丁度良い。
だから、無理に周りの影響を受ける必要もないんじゃないかな。いずれ、それぞれが変化を願うときが来る――そのときまで続くこの距離が、二人の未来を約束してくれるはず。
いやはや、こうしてなんとか日常を取り戻した二人でしたが。四章のいつも通りの展開は、そんな重さはどこ吹く風で大変安心させられましたよ。二人の不器用っぷりが際立ったデーt……もといただの買い物風景には存分にニヤニヤしちゃった。
それでも、ここにきて三章で形を見せた咲の苦悩がシンクロしてくるんですよね。咲の中に渦巻く独占欲。その行き着く先が三章であったのならば、日常の中での発露はある意味当たり前のことなのかもしれません。でも、それにちゃんと刻也は答えてくれるんだ。少々不恰好ながらも、刻也なりの不器用な方法で必ず答えてくれる。
その中で二人の間の足りない言葉を補ってくれる『コトノハ』が出てきたのはまさに僥倖って言っていいんじゃないかな。咲の持つ、『コトノハ』が後々の展開に関わってきそうな予感めいたものがありますね。
1章で見せた、変化の兆し。これが僕の抱いたイマイチの根源にあるものだったのですが、これを紐解いてみると――この他愛もない咲と刻也の日常が変わってほしくない、というものに他なりません。三章でこれに気づかされちゃって思わず苦笑い。いやはや、アンティークを用いた異能バトル展開を予感させる伏線に若干の不安はありますが、見せはじめた変化の兆しを喜ぼうではありませんか。
永遠が果たされないからこそ、今が生きてくる。
過去を捨てて今を大事にしてほしいと願った一人の母親の物語が胸に沁みてきますよね。
変わり始めた咲と刻也の話を静かに見守っていきたい。
……ところで、付喪堂骨董店でwebに強い人雇う気はありませんか? パソコンと格闘する咲に身悶えながらも、これならば僕も活躍できるじゃないか! と妄想してみたり。時給は咲さんの無表情だけで大満足です。咲さんに見つめられるだけで僕付喪堂骨董店のwebサイト作っちゃう!こんなに安上がりな人員はいないはず。
はてさてどうで御座いましょうか。
(それにしても珍しく咲がしっかりとした本を選んできたのには同意。おそらく初心者的な HTML 辞典のようなものではなく、web標準とかに傾いたノウハウ本だったから難しすぎたのではないかな?)
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