アニメ とらドラ! #16 踏み出す一歩

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喧嘩上等、すべてをこの拳に籠める!

うはー。これは仰け反った。こみ上げてくるというか、ここまで無意識に涙が頬を伝ってきたのはとらドラ!では初めてだったかな。改めてアニメ製作陣には驚かされる。

原作の良さはそのままに、緩急つけてシェイプアップされた物語がここまでこのシリーズの魅力を駆り立てるのかもしれないなぁ。情報の取捨選択が非常にうまいと実感させられたのでした。

さて、今回は北村の生徒会選挙編。停滞の象徴であった北村の金髪頭から、1歩を踏み出すきっかけを経て、物語は一気に動き出し始めます。

北村の苦悩って、文字に起こしてみると実は至極単純でつまらないものなんですよね。だけれども、その真っ直ぐさはつまらないとはとてもじゃないけど切り捨てられない。とてもとても真面目で真っ直ぐだったからこそ、柔和に諦める事が出来なくて、真っ二つに折れてしまった鉄パイプのように鋭利な切断面を露にしてしまったのだ。

言っても聞かない馬鹿なら、拳で分からせるしかない。

そうして突っ走った竜児が果たして、またもや『父親という記号』に役割を奪われてしまったのは皮肉ではあったかな。

北村を殴りつける役割は、北村の父親に果たされてしまった。けれども、その段階でケリがついたのは事態が正常なうちに幕を引く予兆に感じられて安心できるきっかけではありましたよね。

北村を思いやり、茶番劇を演じる竜児と大河。そしてそれに付き合ってくれるみんなの温かさが伝わってきて言い知れない一体感を感じました。

だけどもこの男はまだうじうじ悩んでいるんだ。最後の最後まですみれに背中を押してもらわないと足を踏み出せない北村は本当に腑抜けだよ。でもねでもね、このいっぱいいっぱいな感じが痛いほどに伝わってきて胸打たれてしまうの。

『踏み出す一歩』を階段に掛けた足元を映し出すことで記号的に象徴する演出はお見事の一言。見えない表情が鮮烈に浮かび上がってくるようで、粋な演出には舌を巻いてしまいます。

一見収束の兆しを見せた北村の恋模様。しかし、そうは問屋が卸さない。すみれの言葉を借りるならどうしようもなく『不器用』な北村は、足を踏み出してしまったらもう止まれないのだ。全力で走り出すその限界まで走るのをやめない。いや、やめることが出来ないのだ。火のついた感情が行き場を求めて暴走する。

生徒会長就任演説の壇上は又とない絶好のチャンスだったんですよね。だからこそ、すみれの仕打ちは居た堪れないものがあるよなぁ。

それを見てすみれを糾弾する竜児に、「今は北村君のそばに居てあげて」と力ない笑顔で囁く大河の顔が印象的でした。そうか、決意を固めていたんだな。いわば北村の敵討ち。ここにきて、北村を思いやるこの感情は友情のそれだったのかな。想い人ではなく、友人としての敵討ち。おそらく大河の中でもまだ感情を整理し切れていないのではないかと思います。それでも体を動かすのは胸のうちに渦巻く激情。北村の中に行き場のない感情を引き受けて、今大河はすみれの元へと殴りこみをかける。

迫真の鬼気迫る大河の殴りこみ。それを迎え撃つすみれの表情がどことなくほっとした安心感を感じさせたのは気のせいではないのかもしれませんね。

ここからのシーンはまさに圧巻でした。めぐるめく暴力に行き場のない感情を乗せて、思う存分吐き出される感情の応酬。歪む画面、画の隅々まで動く動く。勢いに任せて若いエネルギーがぶつかり合う迫真の大喧嘩に息をするのも忘れて見入ってしまいましたよ。

流れる涙に乗せて、これ以上ないくらいに澄み切った感情の吐露に無意識のままに涙が頬を伝っていくのを感じました。いや~参った。画が動くことでこのシーンがこんなにも魅せる名シーンだったことに改めて気づかされましたね。

ここにきて明らかになったすみれの正体は、器用に振舞う兄貴の仮面を纏った不器用なか弱い女の子、だったんですよね。そう、すみれもただの一人の女の子でしかなかった。そうしてうまくかわすことで自身の身を守っただけだったんですよね。形は違えど、この姿はかつての文化祭編で見せた逢坂父の去り際を彷彿とさせます。

二人は逃げた人物の象徴として共通していたのだ。

すみれが見せてしまったその弱さを、間近で垣間見てしまったことで北村は改めて受け止めることが出来たんじゃないかな。すみれの意を汲み取って、『終わらせた』北村は最後に男を見せてくれましたね。

そうして会長は去った。でもその去り際は驚くほどに逢坂父と違う。すみれは逃げの象徴であると同時に、未来へと羽ばたく希望の象徴でもあったんじゃないかな。

こうして、すみれのフェードアウトが希望の象徴として彩られたとともに、部外者が消えていよいよ竜児たちの関係性が構図として際立ってきました。

とりあえず、ここまで新OP・EDを使わなかった製作陣に改めて敬意を送りたい。おそらくとらドラ!の物語の分岐点とも言える7巻のエピソードから変更されるのでしょうね。所謂第一部は主役たちの関係性が固まったことで幕を閉じたのではないでしょうか。そして、ここから主役たちの青春の思惑入り乱れる第二部が幕を開ける。

ラスト間際、亜美が実乃梨に囁いた一言

罪悪感はなくなった?

が波乱の予感を感じさせますね。実乃梨が罪悪感を感じていた理由、これを問い詰めていくとある一つの結論に行き着く。それは実乃梨が抱いている気持ちの正体。それを指摘する亜美は何を思っていたのかな。どうして亜美は実乃梨にそんなことを言ったのだろう。今までの大人な傍観者であった彼女からは想像できない言動でありました。この言い知れない違和が竜児たちの関係性に根付いた亀裂を象徴させますよね。

いや~面白くなってきた。遺恨を残す後味悪い大河とすみれの仲違いも、非常に後味良く締められて良かったです。ここのはがきを送りつけるエピソードはさりげなく原作で大好きなシーンだったり。いやはや、毎度アニメとらドラ!には驚かされます。確実にアニメ故の面白さを発揮しつつあるアニメとらドラ!に、続く波乱の展開も期待したい。

とらドラ! 6 (6) (電撃文庫 た 20-9)
とらドラ! 6 (6) (電撃文庫 た 20-9)
竹宮 ゆゆこ
アスキー・メディアワークス

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Itary亜人:ラノベと深夜アニメが主食の装飾系(webデザイン趣向的な意味で)ヘタレ男子。
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