[読了]迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの

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迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの (GA文庫)
迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの (GA文庫)
林 亮介
ソフトバンククリエイティブ

あらすじ

『ノーモアクリスマス!』

この世で最も生と死を隔てる壁が薄い場所・迷宮街。そんな迷宮街にも、クリスマスはやってくる。

ひとえに探索者は外の住人よりも派手にイベントを楽しむ。ツナギをクリスマスカラーにしてみたり、「ノーモアクリスマス」と書かれたプラカードを持ってデモ行進をしてみたり。ただ、クリスマスの福音は、探索者に等しく届くわけではない。

死亡率14%のゴールドラッシュ。今日も様々な人間が、様々な理由で迷宮街を出ていく。ある者は幸せに、ある者は無言で。それは12月も変わらない。

書き下ろし短編「祭典の前夜祭」も収録した、現代のガリンペイロ達の物語、第二弾。

言いたかった、でも言えなかった。

「そっか。あいつの骨は拾えなかったか。約束したのに」

「言いたかった。言えるだけの力と実績が欲しかった」

散る花は思い出と後悔に彩られ……。

とても面白かった。もしかすると真壁の生き残る才能というのは、その裏返しとして彼を死者を見送る者としての「死神」たらしめているのかもしれないなぁ。

真壁の痛切な後悔が身を切り裂くような切実さを秘めていて打ちのめされそうになりましたよ。

この後悔はすごく響いてくる。そしてあまつさえ僕の胸を締め付けてくる。おそらく真壁はその生き残る才能をもった聡さゆえに見えていたものがあったのでしょう、が、友人との関係においてこの断絶というのは僕にも思うところがありました。

それだけ仲がいいと思っている友人でさえ、その人生に直接影響を及ぼせない内側の領域というものが存在していて、それを感じ取ってしまったからこそ言い出すことが出来ないのですよね。1対1の対話の中でその境界というのは暗黙の了解的に両者に作用していて、おおよその場合その目測が狂うことはない。言葉に出したとしてもそれは届かないのだ。

そして口に出してしまえば、何か大切なものを違えてしまう恐怖感が先行してしまう。

それでもこれは言わなければいけない、そこでその躊躇を乗り越える説得力として機能するのが真壁の言う「力と実績」なのですよね。

うん、この真壁の独白はとても苦しくて痛いところをついてきたと思う。

ここに迷宮街における確かな「後悔」の形が描かれていた。

上巻から2ヶ月の月日が過ぎた、12月の迷宮街を描いたシリーズ中巻。

大きすぎる犠牲と、決して拭えない後悔に彩られた「街」は今日も迷える探索者を飲み込んでいく。

今回のエピソードでは、段々と真壁の生き残る才能の正体が掴めてきたような気がします。

真壁の生き残る才能の正体――それはこちら側とあちら側の世界を繋ぐ送り人としての「死神」なのではないだろうか。

勿論これは結果論に過ぎない。けれど事実真壁は全力で死を回避する選択を取り続けることが出来ているのですよね。これは『迷宮街』という『死』に取り憑かれた街の中で、その流れに逆らう「異様さ」というものを秘めていたようにも見えます。

同様に、迷宮街の死なない傑物たちもまた皆一様に死なないという『死』に取り憑かれた「死神」なのかもしれない。

ここに、この偶像劇の根幹に根付いた『迷宮街』という場所が内包した異常性の本質があるのではないかと僕は思っています。

『街』に帰着する偶像劇としての『迷宮街クロニクル』 

ただひとつ映画の不可逆性を指示するのは死だけである。

という吉田喜重さんの言葉がありますが、『迷宮街クロニクル』における『死』を考える上でその不可逆性について、「時間」という概念から『探索者』たちの生き様を捉えることで『迷宮街』の秘めた異質さというのを外の世界とうまく対比できるのではないかと思いました。

人間は弱く、だからこそ他人の甘えや弱さを許そうと思う。そうしてみんな迷惑をかけてかけられて歩んでいくものではないのか。それを弱さを許さないもお前など気にしないと示されたときの薄ら寒さ――心細さ。

おそらく『迷宮街』では時が加速している。

このモノローグに、『迷宮街』とその他の世界を隔てているという描写があると同時に、その正体に迫るヒントが隠されていたのではないかと思います。

そう、僕も改めて驚いたのですが真壁たちまだ2ヶ月しか『迷宮街』で過ごしていないのですよ。しかしここに大きな時間に歪みがある。

『迷宮街』においては、強さと速さにイコールが成り立つのではないかな。

これはあくまでも断定に過ぎないのですけれど、この「強さ」たる『迷宮街』の「速さ」に乗れる才能こそが「生き残る才能」と言うものなのではないだろうか。

だからこういった外界との認識のずれが生まれるんだ。

『迷宮街』という『街』は、その速さに乗り切れなかった弱者を否応無しに飲み込んでいく魔窟。躊躇し足踏みするもの、目の前の現実から逃げ出すもの、強さを身につける修練を怠ったもの、そうした強者になりえなかった弱者たちを飲み込んでいく場所ゆえに、そこで生き残った探索者たちは必然的に「強者」となり得る。

しかしこの探索者の「強さ」っていうのは「弱者」を許容しない「強さ」なんじゃないかな。その強者たちが醸し出す空気というのは紛れもなく『迷宮街』のそれで、その底知れない厳しさを肌に感じとったからこその”薄ら寒さ”だったのだと僕は解釈しました。

我々は弱い。だから弱さを抱えた僕たちは否応なく「迷宮街」に取り残されてしまう。

そして弱者はその強者たちを『怪物』と呼んだ。

これはまるで『迷宮街』という魔窟に犇く『怪物』そのものではあるまいか。

そしてそれは「死神」として人間に運命を告げてくる。

偶像劇としての色が益々強まったシリーズ2巻。

”迷宮街の2ヶ月”という観点から時間を加速させることで『迷宮街』が抱えた『死』の形を浮き彫りにしてきた。

とても読み応えがある1冊だった。改めてこの偶像劇に流れる『強さ』と『弱さ』の形は非常に洗練されているように思えます。特に能力が『強さ』に――必ずしも生き残る才能に――比例しない、という証明には舌を巻きましたね。

それと同時に、後藤の「強さ」にも非常に興味深いものを感じました。

おそらく彼の「強さ」というのは外の世界、こちら側の世界の「強さ」として描かれているのだと思う。だからこそ、『探索者』たちの『強さ』への反証として、その説を補強する形でより鮮明に像を結ぶ手助けをしてくれたのではないでしょうか。

後藤の「強さ」には「弱さ」が潜んでいる。けれど、「弱者」を決して見捨てない「強さ」には確かな温かみが篭っておりました。

そんな様々な人間の人生が交錯する12月の迷宮街を描いたシリーズ中巻。

上巻に手をつけられていない方もまだ間に合います。是非おすすめしてみたい。濃密な人生の縮図を垣間見たような壮大な偶像劇が圧巻でした。よりこのエッセンスは濃縮されてきてる。下巻も楽しみにさせて頂きます。

迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル? (GA文庫)
迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル? (GA文庫)
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Itary亜人:ラノベと深夜アニメが主食の装飾系(webデザイン趣向的な意味で)ヘタレ男子。
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