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芽吹いた「生」の炎が猛々しくも燃え上がり、美しくも散り行く「生」の終焉が、「アイン」と「ツヴァイ」という「生」と絡める形で象徴されていたのではないでしょうか。
家族を『インフェルノ』に惨殺され、ファミリーすらも奪われてしまった”石頭トニー”が起こした最後の復讐劇。その荒々しい炎は見ているだけでも痛々しくて燃え尽きる寸前に見せた最後の輝きにも思えました。
今回のエピソードで興味深かったのはやはり象徴的に用いられたオブジェだったのではないかな。
アインが活けていた一輪の花。その逞しさというのはアインの中に芽生えた記憶を失ってからの彼女自身で、そのアイデンティティを誇るように凛と咲いているのですよね。言わばアインの中に芽生えた「アイン」。その名前が意味するとおり、1という形ある存在なのだ。
生ける屍としてただ怠惰に日々を浪費してきた彼女が、花を活け始めるようになったのは、4話で見せた「演技」の中にかつての自分の残り香を感じ取ったからではないかな。そこにたしかな「生」の実感を感じ取ったとともに、かつての自分への憧憬が「アイン」というアイデンティティを形作るに至ったのではないかと思います。
しかしその希望の「生」は、儚くもサイスの「曲芸」によって揺さぶられる。
サイスの冷酷な欲求のためだけに生かされる彼女は、以前にもより強く「アイン」の消失を感じとったのではないだろうか。サイスが志向しているのでは「アイン」ではない、芸術品としての「ファントム」なのだ。そんな彼の欲望は無慈悲にも「アイン」を否定する。
生きつづけるために「アイン」を捨てなくてはならないアインは、以前にも増して胸を貫いてくる痛みに、より鈍感にならざるを得なかったのではないかなぁ。だからアインは「曲芸」の遂行へと逃避することで思考停止することを選んだのだ。
だが、アインの中の「アイン」は「ファントム」に抗おうと必死でもがき続ける。足掻き苦しむ。光の消えたその瞳の裏側で、アインの中の「アイン」が声にならない悲鳴をあげているようだった。そんな仮面の裏側に隠された荒々しい心の揺れ動きが、トニーの復讐劇とシンクロしていくのですよね。
流れ出るガソリンは「生」の清水。火のついたそれは「大火」を上げ、燃え尽きるその瞬間まで荒々しく燃え続ける。
事切れる瞬間。ウィスキーの入ったグラスが砕け散るのはあまりにもあっけない一瞬で、ここに「生」が燃え尽きた男とともに、魂を売り渡し「生」を投げ出した一人の男が描かれていた。
その男の先に待ち受けた実態のない魂の抜け殻が、まさしく「ファントム」の行こうとしている所なのではないだろうか。
こういった具合に「アイン」の行く末を象徴していたわけだが、実際に「アイン」の命運を握るのは、「ファントム」の片割れとしてその命を繋ぎとめられたツヴァイなのですよ。
彼もまた「ツヴァイ」を生み出し、「ファントム」の幻影に苛まれていながら、その本質は異をなします。彼は本質的にアインとは違う。
ツヴァイは既に「ファントム」を内側に取り入れているのだ。
いわば「ツヴァイ」と「ファントム」の共存という異常な形を保っている。これがサイスのいうツヴァイの「才能」の正体なのではないかな。
ツヴァイは「生」への本能として「ファントム」が在ることをを赦してしまえるのですよ。そして「ツヴァイ」はそれを決して覗き見ない。「ファントム」から無意識的に目を背ける「ツヴァイ」として彼は「生」を保っている。
この狡さがある意味一番のカルマだよなぁ。
おそらく「アイン」がツヴァイに恐怖したその根本にあったのがこの「カルマ」だったのだと思う。
「ファントム」への恐れ、というのは実はあまり正確ではない。
これは思考停止することでその恐怖を塗りつぶしてしまうことが出来るからだ。これが言わば「生」を放り出した状態。枯れた「生」なのである。しかしツヴァイには「ツヴァイ」が「生」きている。これがとても怖いのですよ。
「ツヴァイ」という「生」を生きながらも、「ファントム」という亡霊に目を向けようとしない、痛みを感じない、この感覚が「アイン」には身の毛もよだつくらいに怖いの。
だからアインは枯れてしまったのだと思う。「ファントム」になることを選択することで。
最後に映し出された枯れおちた「アイン」の花が、彼女の心の機微を如実に物語っているようでした。
でもアインのこの真っ直ぐさは、「アイン」を再び呼び戻し得る凛とした強さも秘めているのよ。アインはツヴァイとは違って強い。決して「ファントム」から目を背けようとしないで甘んじて受け入れることを選択してしまうような強さがあります。
だから僕は楽しみでもあるかな。彼女は決して「アイン」と「ファントム」を両立させることは出来ない。だからこそ「ファントム」に打ち勝ったときこそが「アイン」が返り咲く最高の瞬間でもあります。
「アイン」が『ファントム』になりうるのは「ツヴァイ」との二心同体としての『ファントム』以外ありえない。
その『ファントム』の成立こそが、「大火」の”再演”となることでしょう。
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KARMA
- SMD jutaku(SME)(M)2009-04-22
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