- 純潔ブルースプリング
- 十文字 青
- 角川書店(角川グループパブリッシング)
過去のトラウマから世の中を醒めた目で俯瞰する真南了、時代遅れのリーゼントが自慢の熱き男、番場公威、支離滅裂で破滅的な紅一点、七瀬林檎をはじめとする、淡い団結で結ばれた六人のクラスメート―。刻一刻と“終わり”が迫る世の中で、不格好ながらも、曇りのない正義感と友情、そして不器用な恋に生きる彼らのひと夏を綴った、とびきりポップな青春グラフィティ―。第7回角川学園小説大賞受賞作。
刻一刻と”"終わり”"が迫る世の中で、不格好ながらも、曇りのない正義感と友情、そして不器用な恋に生きる6人仲間のひと夏を綴った、とびきりポップな青春グラフィティ! 十文字青、幻の受賞作、ついに登場!!
「ありがとう。ところで君はだあれ?」
「Φ(ファイ)?」
「誰って……何だよ、倉田君、記憶喪失にでもなっちまったのか?」
「たぶん、記憶は喪失していないと思うけど、僕には君が誰だかわからないよ」
「そんなバハマ!」
見知らぬ男は盛大に椅子をひっくり返して床に倒れた。
「あー。痛くないのかな? 大丈夫?」
「……いや、、痛いっす。ちょっとやりすぎた。頭打っちまったい」
「救急車呼んだほうがいいかな?」
「そこまでは……」
ああ、ここが”作家・十文字青”の原点だったんだ。
緻密な人物の心情描写に、どこかほろ苦さを残しながらも若く青く駆け抜けるような青春の物語が美しかったなぁ。
学校から、この滅び行く世界から、はみ出してしまった――淡い団結で結ばれた六人のクラスメートが織り成すとびきりポップな青春グラフィティ。
とても愉快な6人組の掛け合いは、思わず顔がニヤけたり、ときに腹の底がねじ切れるくらい楽しかった。
物語は真南と番場の二人の主人公を主軸に展開していきます。
真南の諦念に、番場の熱い「紅」が火を注ぎ、林檎の紅一点の「純潔」が油を注ぎ込む! 燃え上がり、躍動する魂の劫火は関係の”終わり”を拒絶し、過去のいざこざさえも巻き込んでそれはもう盛大に燃え上がったのよね。粛々と、けれど厳粛に燃え上がるその「青の炎」のイメージは、墜落の月が覆い隠した終末の影を「青春」の劫火で爛々と照らし出すのです。
これは終末を抱えた世界の中で、二人の主人公が正反対の信条を掲げながら大切な人を守り抜こうと奮起する純潔の「青春」物語。
穢されてしまってもなお、その「純潔」は純潔でありつづけるのだ。
真南の不器用な想いや、番場の愚直で真っ直ぐな想いを告白するシーンはジンと痺れ上がるような名シーンだったなぁ。
彼女を寝取られてもなお、心の中の「純潔」を信じ続けた『ぷりるん!』や、「死」という終末の恐怖に囚われた男女が手を取り合い共にありつづけることをその星に誓い合う『ヴァンパイアノイズム』といった今の”作家・十文字青”の原点でもあり、またそれらが原点回帰する元となる源流でもあった本作。
デビューの始めからしたためられ、幾度も改稿を重ねられてようやく世に出ることができた幻の受賞作。
友情と恋心は交錯し、6人の仲間と共に笑いあい泣きあいときに傷を作って泥まみれになりながらも手を繋いで世界が終わるそのときまで皆は共にあり続ける!


















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