| 『 WHITE ALBUM 』 | 15話 » | |
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| WHITE ALBUM 後半 第十四頁 チューニングが合ったためしがない。 もっと良好な場所があると思ってしまう | WHITE ALBUM 後半 第十五頁 見つからないものが、まわりを壊す。 そこにないから、手の打ちようがない |
13頁。冬弥の親父さんが倒れた所で締めくくられた『WHITE ALBUM 前半』。その続きから、舞台は病院での一幕を皮切りに幕をあけたWHITE ALBUM 後半』でありました。
本当は1~13頁を事前にもう一度見返したかったのだけど、そのまま登場人物たちが胸に抱えていたものを思い出せないまま見始めた序盤。
思い出した。そうだ、冬弥はこういう男だった。
親父さんが倒れたというのに、病室に見舞いに来た由綺を何故返したと父親に詰め寄る姿に幻滅してしまうのは無理もないことでしょう。けれどそれは由綺に逢いたいという思いとは裏腹に、父親が死ぬことなどありえない、という安心からくるものに思えました。
冬弥ってそういう人物なのよ。決して先に待つ懸案事項を考えようとしない。想像が巡らない。元気に父親と喧嘩が出来るのもまた冬弥なりの愛情表現なのは間違いないのだけど、場を弁えない冬弥を美咲が突き放したもの無理はなかった。
考えてみれば分かるのよね、何故由綺が来ないのか――。それはコンサート前の微妙な空気を引きずっていたのとともに、父親の突然の不幸に見舞われた冬弥とどう顔をあわせていいかわからなかったから。むしろそうした機微を敏感に感じ取って冬弥の父は彼女を返したともいえる。そうした由綺と冬弥微妙なすれ違いを「病室」という舞台は包み込んだのでありました。
ここで展開を整理しておこう。14頁で新しく出てきたのが英二のロンドンでの日々と、そこで涙を流すほど見入った一枚の「絵」。緒方プロとMMミュージックの対決が、クリスマスイブの頂上決戦だけではなく、もっと深い社長同士の「対決」だったことがこの「絵」の登場によって明らかになるとともに、はるかとマナの繋がりを経由して神崎社長の「母親」としての顔と、それとは対照的に「社長」の顔を向けられた「めのう」の浮上によって二つのプロダクションが連立する。
そうして分け隔てられた緒方プロダクションという枠組みの中で、理奈は兄の英二に興味を向けられた由綺に嫉妬を覚えるとともに、”負けた”という敗北感に打ちひしがれるのですよね。けれど、その英二が本当に見つめているのは一枚の「絵」のようで――。
緒方英二と神埼社長の対立構造へと線の延びた「対決」によって、その起源となるであろう英二の過去へと焦点が向けられていくのかもしれません。
そうした英二を巡る因果の中でいっぱいいっぱいになっていく理奈と、もう一つの流れを生み出すのが篠塚弥生――その人なのです。
弥生と由綺の車内でのシーンはとても印象的だったと思う。
由綺は弥生を「喫茶・エコーズ」へと誘おうとするのだけど、それを断る弥生は、冬弥の影を追い求めて一人で「喫茶・エコーズ」に姿を現すのですよね。
アバン、病院の廊下で視線を合わせた二人。
ここは冬弥の場所であるから――由綺とは来たくないという気持ちと、彼との蜜月に思いを馳せて彼の姿を追い求めてしまうという二律背反。愛情と愛憎は裏返しとあって、由綺への想いは次第に後ろめたさと憎さのあいまった愛憎へと変化を遂げたのではないでしょうか。そうした心の機微が、由綺を拒絶するシーンの合間に垣間見えてぞくぞくと震え上がってしまうのですよね。
しかし、その弥生の想いに答えるように、冬弥は弥生を病院……しいては「病室」へと誘いだして――。
タクシーで病院に向かいながらも寸前で引き返してしまう由綺とすれ違うように、空いた病室で弥生と体を重ね合わる冬弥。
代わり 今夜だけ あなたは 由綺だ
由綺から目を背けるのに、けれどどうしようなく由綺へと向かざるをえない二律背反な想いと既成事実を包み込んだその場所は――まさしく名前が指し示すように「病室」の様相を呈していました。
思えば、アバンのマナから弥生へと”熱を出すほどの病気”はその意味をかえてバトンタッチされたのだろう。
こうして幕をあけた白いアルバムの14頁。
知らない、ということに一抹の狂気の可能性を残した由綺と、想像の中の由綺へと歩み寄る冬弥。すれ違いの恋人同士の背景で蠢く感情も、理奈と桜団との歩み寄りにみられるように構図の融和を図りつつ、英二や神崎社長の対立みたくそれぞれが思い描く問題の根源へと目が向けられつつあるように思えます。
そうして研ぎ澄まされた感情は、ときに「肉体」へと向けられて――。
13頁の一旦の閉幕から再浮上したはるかやマナの関わりも気になるところなのであります。
あと、水樹奈々さんの歌う新OP「夢幻」もよかった。前半の「深愛」が由綺の心情を表した歌詞だったのなら、後半の「夢幻」は理奈の心情といったところでしょうか。相変わらず痺れるような入りに、鳥肌がたったのでございます。
やはり久しぶりにこの作品をみて思ったのは、僕はこの空気感というのがすごく好きだった、ということ。
W.A.の画面について細かいことはちょっと分からないのだけど、間接的な行動によって「ある特定の人物との行動を選択しない」→「その理由は何故か」→「大切な人との場所だから」→「胸中が明らかになる」とシーンの連鎖の背景に濃厚な心情描写を発掘していくのが凄く好き。
外堀を埋めていくようにキャラの行動あるいは選択のみが示唆的に「心の機微の在り処」を指し示していくアニメ、というのがW.A.の特徴でもあり魅力でもあると思っていたり。ただ、そこに”ある”んだよね。浮き文字なんかはまさしくそれを指差してるようなイメージ。徹底的に内側の声を表に出さない。
だからその震え上がるような強烈な心の声の吐露に痺れちゃうのよねぇ。画面に出ないから、直接心の中に入り込んできて再生される、といいますか。
13頁で全員が土俵へと上がった『WHITE ALBUM』。再び幕をあけた後半の舞台劇に、その動向を見守っていきたい。
- 夢幻
- キングレコード2009-10-28
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