[読了]向日葵とRose-Noir

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あらすじ

「お前は美少女。それでいんじゃね」

16歳。錯乱の夏は地獄の季節。講談社BOX新人賞初の大賞受賞作「白の断章」で奇跡のデビューの鏡征爾がはなつ期待の第2作!!

さとうまもると雛見雛、16歳。常識を逸脱し規則を踏み外し生を剥奪された2人の錯乱の夏。

これは自棄的な世界の果てに立ち現れる痙攣する希望を描く新鮮なる恋愛小説。

講談社BOX新人賞初の大賞作家、鏡征爾が紡ぐ呪詛の言葉は時代の期待を決して裏切らない。

読者よ、地獄の季節とともに疾走せよ!

大変残念なことに、俺の趣味は監禁である。

「いつか、」

「いつか、デビューしてCDをたくさん売って、たくさんの人に私の歌を聞いてもらいたい。それが」そこでヒナは顔を上げて、これまで見たことがないような、曇りのない笑顔で華のように笑った。

「それが、私の夢です」

世界が――、反転する。

鈍器で殴られたような衝撃。

頁をめくるごとに頭の中に靄がたちこめ、淡いベールでつつみこまれるような感覚におそわれて段々頭が働かなくなってしまった。文字通り錯乱した。頭おかしくなるかと思った。読み終わってもなお、まだ意識が混濁しているような気がするなぁ。

よかったか、といわれるとむしろ悪かったようにも思えてくるし、わりと否定的な感想があってもいっそすがすがしいまでに何ら違和感がない。ともあれ、いろいろ不安定になる問題作なのは間違いない。

もうなんか頭おかしい。気がついたら知らない人の家で人形抱いて寝てた、くらいのレベル。いや、そのおかしさに自覚的な間はまだよくて、次第にそうした自分を受け入れていくなかで完璧に足の踏み外した音がしたなぁ。

球体関節人形に失踪した恋人の面影を重ねる姉・レイカと、その役を演じながら失踪したはずの男に動物の遺体処理を請け負わされている高校生・弾魔龍爾郎が危うい日常生活を送る中で、雛見雛というアイドル顔負けの美貌の少女が現れて――という物語。

凄い引力でこの”錯乱する”物語に引き込まれてしまった。

はっきりいってこの本を客観的に評価するのは不可能に思えるのだけど、あえてアカデミックに分析するならば極めて批評的に書くこともできる本、といった印象を受けました。

これは一種の不条理劇なのだけど、それでいて論理的に組み立てられていて矛盾した脈略を説明できる余地が残されている。その絶妙な”バランス感覚”が、この作者の「技術」なのかもしれません。

この物語はいわば、見るもの、知るものとしての主体の意識が、本来客体であるものにまで入り込んで、その中に移動した意識の発端と末尾が、別の客体の侵入へと繋ぎ合わせられることで一見無秩序な物語の脈略をつくりあげているのですよね。

けれど、殺したはずの人間が結果として生きていたり、あるいはその逆が起こったりする。矛盾する。この結末と過程の不一致が、どちらかが虚構であることを物語っており、「主人公」のアトランダムに移り変わる意識の不正確さを強調するのです。

つまりは、この「主人公」こと彼・弾魔龍爾郎は他者の意識へと潜り込むようにその言動を模倣していくのではないかな。それも極めて自己中心的に。

まぶたの裏に映像として浮かぶ情景が彼を”錯乱”させる。

他者という存在もまた、自分がそう解釈した「他者」に他ならない。

そうして彼は「眼上のシリコン義眼は傾斜偏角マイクロα。接合石塑接着は♯18ステンレスワイヤー。均一投射アクリル濃度はβ100/800/%」の思考停止の呪文を紡いでそれらの人物の意識を”妄想”しながら忽然となりきり始めてしまうのです。あるいは、彼の認識した「他者」がもうすでに”妄想”なのかもしれない。

どこまでが妄想で、どこからが現実なのか次第にあいまいになって混濁していく過程が絶妙で、欠落した過程の中に芽生えた、無意識的な欲望――どこまでも突き抜けていくナルシズム――こそがこの作品の最大の魅力だと言えましょう。

物語に入り込んでしまう、すごい酩酊感をもたらしてくれる問題作。

まだ頭がグラグラする……。読了後に人と接するだけの簡単な動作がひどくおかしなものに見えてよくわからない違和感に苛まれたのには苦笑い。

もうなんか作者がアレというか、ここまで痛すぎると「鏡征爾」自体がネタというか、一つのキャラというか、プロフィールのイケメン写真も学歴もそういう”設定”なんじゃないかと思えてくるのです。

読み終わってみると”イケメンだけど頭のおかしい金髪の彼”、といえばどうみても先生自身にしか見えなかった(むしろほめ言葉です)。

ともあれ、前作『白の断章』で得たものをすべて断ち切るように描かれた入魂の一作。

次回作もまた、すべてを大きく揺るがすような一冊になるのかもしれません。

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Itary亜人:ラノベと深夜アニメが主食の装飾系(webデザイン趣向的な意味で)ヘタレ男子。
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