- ラ・のべつまくなし (ガガガ文庫)
- 壱月 龍一
- 小学館
恋愛経験ゼロ。生真面目に純文学を志すも、希望とは裏腹にラノベ作家としてデビューしてしまった青年・矢文学。
しかも著作は、ネットの口コミもあり大ヒット!メディアミックスも決まり順風満帆!……のはずが、原稿が書けない!
気晴らしに、通い慣れた図書館に向かったブンガクは、そこで出会った少女・明日葉に一目惚れしてしまう。
彼女はブンガクのラノベ作品の大ファンで、聖地巡礼の途中だった。仲良くなろうとするものの、
ブンガクは二次元アレルギー、明日葉は腐女子で……。カタブツとフジョシの純愛系ラブコメディ!!
不覚だった。あまりにも唐突に、それは訪れた。
こんなことは初めてだった。
喉の奥が、ひとりでに震え始める。
「どうですか? ブンガクさん」
明日葉は満面の笑みを浮かべた。
好きなものを語る、彼女の一番の笑顔。
「こんなにたくさんの人が、ブンガクさんの作品のこと、キャラクターのことが大好きなんです!もちろん、ボクもその一人です!」
あーなんかもうご馳走さまでした!!!(ゴロゴロゴロゴロ
純文学を志しながら作家デビューするも、二次元アレルギーと格闘しながら日々ラノベ作家として物語を書き続ける矢文学ことブンガクくんと、彼の著作「かみたまっ!」の聖地巡礼中にその本人と出会ってしまったみまごうことなき腐女子・明日葉の腐思議なベタ甘ラブストーリーです。
初々しいブンガクくんと楽しそうに妄想の世界にトリップっする明日葉の組み合わせがひたすらきゅんとくるお話だったなぁ。そしてそんな二人を通して、この作品はなんとも創作に対する愛があふれているのです。商業作品としての一次創作、商業の絡まない誰かのための創作、そして溢れる愛にかまけてひたすらキャラ愛を注ぎ込む二次創作と、創作に没頭する人々の愛情がこれぞとばかりにのべつまくなしに語られていくのですよね。
そして明日葉の二次元への想いも、ブンガクの物語を書くことへの想いも、その発端は同じところにあった、ということを二人の出会いを通じて再確認するの。
いわば、ブンガクの純文学への想いは書きたいという衝動に体裁を取り繕ろうことだった。常に他人からどう見られるかを気にしてしまう彼は、彼自身のプライドもあいまって、ひたすら己の中にある”綺麗なモノ”を言葉で表現しようと試みていたのだけど、明日葉を初めて目にしたときに、その”綺麗なモノ”を目の当たりにしたのと、同時に言葉では表せないことにも気づいてしまったのよね。
そんな明日葉との出会いは、ブンガクに彼が幼い頃に感じていた”想像することの楽しみ”を思い出させてくれる。
ブンガグの思い描いた幼きころの「不思議の国のアリス」の世界が、明日葉がみせてくれた「腐思議の国」の世界とシンクロする瞬間。
けれど、ブンガグのその感動は、同時に女性への幻想が大いに含まれていることも示唆しているのですよね。彼は明日葉に恋してる。でも、それは同時に「明日葉」という女の子を美化していることでもあるの。そんな彼の抱いた幻想を、明日葉の別の一面をみせることによって自覚を促す展開は、この”綺麗すぎる”物語の良心のようにも思えました。明日葉は決して女神様ではないのよ、ちょっぴり腐った”普通の女の子”でしかないの。
たとえ「腐女子」という存在そのものにどんな感情を抱こうとも、それもまた等しく中身は普通の女の子なんだよ、と言われているようにも思えたかな。
そして物語は二人の「腐思議の国」へと向かって加速する。
作家と読者の関係から、一人の男と異性の関係へ。届かない男女の想いの、作家としてもっとも粋な伝え方というのが、現代のネット環境によってリアルタイムで果たされていくのに痺れたなぁ。twitterを模した、「ノベッター」というリアルタイムコミュニケーションサイト上で紡がれるたった一人のための物語。時代錯誤な佇まいの彼が、彼を形作る時代の壁を突っ切って、現代へと到達するとともに、作者と読者の壁を突き破って恋人同士という立ち位置へと到達する突破感を感じました。
一時はどうなることかとやきもきしたのだけど、二人の一途な想いを垣間見てごろごろ転げ回りたくなったなぁ……。なんというか「もうお前ら結婚しちゃえよ!」。
ブンガクと明日葉を取り巻く周りの人々も、それぞれ個性溢れた面々ばかりでにやにやしちゃったかな。特に圭介とゆずちゃんのカップルにはいろいろにやにやさせられた。その純情っぷりはズルい……!
あぁ……愛に溢れておる……七夕ペンタゴンでも思ったことなのだけど、ホントこの壱月さんという方は人の想像の中に確かに感覚として存在している”キレイなもの”を描き出すのがうまいよなぁ。さらさらと流れるように内側へと入り込んでくるのです。
体裁をとりつくろったりせず……ただありのままに自分に正直な気持ちを吐露するように世界の中に没頭するのがライトノベル。そう、示されたような気がしたある意味「ラノベ部」とは違う切り口から切り込んだラノベ啓蒙小説なのではないでしょうか。
これは自分の愛するものを、自信をもってのべつまくなしに語りかけてくるちょっと元気の出てくる腐思議なベタ甘ラブロマンス。中表紙からもう非常に魅力的な一冊でした。腐男子の僕は、ブン×ケイの親友CPにゴロゴロ転げ回った……! 敬語攻めおいしいです。


















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