佐天さんと美琴の”本気ゲンカ”として―― とある科学の超電磁砲 #12 「AIMバースト」

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学園都市を支配する《科学》という言説―― #11 「木山せんせい」 佐天さんと美琴の”本気ゲンカ”として―― #12 「AIMバースト」 #2 「炎天下の作業には水分補給が必須ですのよ」

感心した……。というのは、これがイデオロギーの対立ではなく、階級闘争でもなく、純粋な友達通しの本気ゲンカとして描かれたということ。 AIMバーストという化物が《科学》の実像としてではなく、さまざまなコンプレックスをもった子どもたちの集合体、その一人である佐天さんが力を持って美琴に抵抗するということに意味があった。今まで散々「学園都市」の権威主義的な一面の検証を重ねてきたことが報われたような気がしました。

それでは、今回のエピソードでみせてくれた、青春の想い迸る闘争を追ってみることに致しましょう。

「AIMバースト」の叫び――佐天さんと美琴の本気喧嘩として

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このエピソードで魅了されたのが、なんといってもこの本気の対決でした。

要するに「 AIMバースト」とは何だったのかがこのエピソードにあてられた主眼でもあるわけですが、これが抑圧された子どもたちの心の叫び、その思念体としての実体であったことが非常に良かった。

以前、前回のエピソードではこう書き記しました。

学園都市を支配する《科学》という言説―― とある科学の超電磁砲 #11 「木山せんせい」 » だい亜りー

それは、人を下位に、人あらざるものを上位にした――《人間》対《科学》という構図だったのです。

この胎児のイメージを模した「 AIMバースト」という化物はOPでちらっと先出しされていた他は特に連想させるイメージはなく、どこから来たものなのかはイメージを膨らませて妄想する他ないのですが、この《科学》が作り出した化物との対立こそが、1クールのトリを飾る第一部の幕引きに相応しい”ラスボス”だと思いました。

しかし、これは《科学》の権威の実像なんかではなかった。限りなく黙殺された「サイレント・マジョリティ」たちの言葉にならない心の叫びだったのです。

そしてその「マジョリティ・リポート」ですらない、心の叫びが、実体をもって、ただひたすらに暴れまわるという切実すぎる「サイレント・マジョリティ」たちの心象描写には感心するほかありませんでした。

《レベルアッパー》ネットワークによって引き結ばれた心の叫びが、実体をもって脅威となる。その脅威が大迫力のバトルシーンとシンクロするのがなんといってもこの作品の持ち味でしょう。

その集合体「 AIMバースト」の怨嗟に対象と意味を与えたのは美琴よね。ほかならぬ美琴が、この「 AIMバースト」の怨嗟に向きを与え、得た力を自分にぶつけてこいとけしかけた。でもそれが《レベル5》のいう傲慢な科白ではないのは、このフィールドが高架下――「学園都市」の領域の外――であるのと、いわばかつての佐天さんに向けたメッセージだからだと思うのです。

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善/悪といった二項対立的な横軸の対立から、

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美琴が「巻き込む」縦軸の一直線上へ。

そしてこれは美琴の抱いていた浅慮な思想の自嘲でもある……だけど美琴はこれしかしらないから……だから美琴の倫理にしたがって決着をつけようとする。

美琴のレールガンの能力は、まるでそうした立ちふさがるものすべてを自分の意志で貫いていくさまを体現しているようでした。

「学園都市」の埒外のフィールドで繰り広げられる美琴と佐天さんの本気喧嘩。けれど、彼女ら《逸脱者》と「学園都市」を繋ぐパイプとなるのが初春だったのです。

初春にしかできないこと――再び「学園都市」の地を踏めるための架け橋として

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初春にもまた、彼女だけの闘いがありました。

高架上から去っていくのかと思いきゃ、高架の陥没が作り出す断絶を乗り越えて高架下まで降りてくる初春。彼女には、「 AIMバースト」の痛みがわかるし、美琴とそれらの間のパイプにもなるのですよね。

それだけでなく初春は、「木山せんせい」と子どもたちの間をも繋いでしまう。

そんな初春の闘いとは、ずばり佐天さんを――断線してしまった《親友》のネットワークを――取り戻すことでもありました。彼女だけが、「学園都市」の領域とその他を自由に行き来出来る。架け橋となることができる。そうした一人の少女として、描かれていたのではないかと思います。

脱ぎ捨てる《脱ぎ女》――科学者から一人の木山春生として

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AIMバースト」の持ったもう一つの意味が、木山とその罪として生み出されてしまった「 AIMバースト」の関わりでした。

木山は「 AIMバースト」に子どもたちを投影したのだと思う。そしてそれは彼女にとって、《レベルアッパー》ネットワークの生み出した新しい罪そのものだった。

生み出すということ、そして脱ぎ捨てるということ、といった木山をめぐる身体表現には、このエピソードが個人に収束する手綱をとっていたのではないでしょうか。

いわばこの一連のお話は、木山の挫折と怨嗟に創出されて、そして脱ぎ去るということがそれらを棄却し、科学者・木山春生の狂気として消費される。

そして木山自身もまた、白衣を脱ぎ去ることで、彼女の上に重くのしかかっていた《科学》という枷を脱ぎ捨てることができたのだと思います。

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一度目のカットでは諦めから脱ぎ捨てられた白衣だったのが、 20091220-railgun-cap6-2

二度目に挿入されたカットでは前後の文脈から、木山がまるで自分から白衣を脱ぎ捨てるかのようなダブルミーニングがかかっている。

それでも「手段を選ばない」木山は、新しい衣をきて、何度でも脱ぎ捨ててみせるといった彼女なりの自嘲だったのかもしれません。

こうして《科学》に抑圧され”た”人々の物語は幕を閉じた。

舞台は再び「学園都市」へ――《友達》同士の仲直りとして

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再び陽の光を浴びることのできた佐天さん。あの電話ぶりに顔を合わす初春との間には気恥ずかしさを感じるのですが、しかし親友の負った傷をみて抱きしめるシーンはこみ上げてきたなぁ。でも、ここでも美琴/黒子と佐天さん/初春の間には距離があるんですよね。文中の表記で《親友》と《友達》を区別しているのもここに由来があります。

この両者の距離は「学園都市」における《レベル》の間に横たわる距離。それを結ぶ架け橋となったのも、初春でした。

まだまだ何も問題は解決していない。けれど、「学園都市」というマクロの領域ではなく、彼女たち4人を引き結ぶミクロの《友達》のネットワークに物語が収束したのがよかったと思います。背伸びしすぎずに、あくまで少女たちの青春の物語として。

先程の横軸の対立はいわば木山たち大人のみる景色。木山の視線ショットと限りなく近い客観視点での AIMバーストとアンチスキルの横軸の対立から、美琴の背後へと視点が移動して一直線上に立ち並ぶように、美琴に主体が、美琴のみる「学園都市」に視点がフォーカスしたお話だったと思います。確かに軸のすりかわりかもしれない、けれどその狭い視野から美琴が目の当たりにしていくことになるドラマをみていけばいいのではかな。

「陽」の光の中に身を置く彼女たちは、この「学園都市」の「陰」に背向けていることにかわりはありません。そこへ物語が波及していくのが、2クール目からのエピソードなのかもしれませんね。

というわけで、今までねっとりと「学園都市」の権威主義的な側面を検証してきたのもあって、1クールのトリを飾るこのエピソードはさらりとまとめてみることにしました。

そしてこのエピソードをもって、木山春生の見た「《科学》という言説に支配された『学園都市』」も消費されたのですよね。この軸が揺らぐのか、あるいはここから立脚してさらに物語が配列されていくのかはまだ予想できないのですが、消費されたという事実は頭の隅においておくべきかもしれません。

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初春のスカートの下に隠されたパンツは《親友》のネットワークのプロトコルとして、その柄は佐天さんの笑顔の架け橋として、そして彼女たちの肌の触れ合いは《友達》のネットワークを引き結ぶ確かな繋がりとして――彼女たちの友情の物語として収束した1クールでした。

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続く水着回に期待してみたい。

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